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Novelber/14:ポケット

 ゲイルのポケットの中には何でも入っている、と信じていた頃がオズにもあった。
 ゲイルがポケットに手を入れれば、出てくるのは銀色のコインにつやつやの硝子球、綺麗な形の小石にその辺で釣ったザリガニ。そういうものをいっぱいに詰め込んだポケットはいつだってぱんぱんで、そんなゲイルをオズはきらきらした目で見つめていたのだと思い出す。
 ……その悪癖が今も続いているというのは、流石にどうかと思うのだが。
「ゲイル、何でポケットからザリガニが出てくるんだ」
「え、いや、この前ガキたちがザリガニ釣りしてたから、ここは俺様の腕の見せ所だと思って」
「見せなくていいし、何でいい大人がザリガニ釣りで盛り上がってるんだ」
「だってかっこいいじゃん……、ザリガニ……」
「その主張はわからなくもないが、金と一緒に入れるな。札も煙草もぐしょぐしょになってるだろ」
「そうなんだよなー。ってなわけでオズ、煙草くれよ」
「ふざけんな、自分で買って来い」
 言いながら、深々と溜息をつく。一体ゲイルはどこで大人になり損ねてしまったのか。そんなことを考えながら、まあ、そのあたりはお互い様だと思わざるを得ないことに気づいて、オズは更に溜息を深めるのだった。
 
(ある日の霧航士宿舎にて)

あざらしの餌がすこしだけ豪華になります。