Twitter300字SS「橋」
灯を篭めたランタンを片手に、彼らは橋を渡っていく。ひとり、またひとりと霧の中に消えていく影を追って、彼もまた足を踏み出した、その時。
「お前はここまでだ」
耳慣れた、穏やかな声と共に誰かが目の前に立ちはだかる。霧に隠れているにもかかわらず、何故か、困ったように笑っているとわかる。
何故を問うても応えはなく、そのまま誰かもまた橋を渡ろうとする。
「待って、」
声を上げかけて、気づく。彼は橋の上で一人きりで佇んでいた。一歩先は腐り崩れ落ちていて、もし足を踏み出していたら、虚空に身を投げ出していただろう。
けれど。けれど。
「オレも、みんなと一緒に、いきたかった」
霧深い夜。ただ一人遺されたものの嗚咽が、響く。
――『灯花祭の夜』
あざらしの餌がすこしだけ豪華になります。