« C'était à cause du soleil »

「最近どうも」
「なに?」
「私の子猫があまり会いに来てくれなくて」
「えっ、それ本人に言うの」
「聞くところによると仕事が忙しいわけでもなさそうだし」
「……」
「なにか私の方に原因でもあるんだろうか。どう思う?」
「あの……」
「ん?」
「そんな遠回しに言わなくても……言うほど来てなかったっけ?」
「来てもすぐ帰ってしまうだろう」
「あぁー、たしかに」
「気に障ることでもしたかな。もう私に飽きてしまっただろうか」
「珍しく弱気」
「新しい飼い主でも見つけたのかと思っていたがそうでもないらしくて」
「突然の嫌味」
「蜜月は終わってしまったかな」
「蜜月だったつもりはないな」
「寂しいものだね」
「……、暑いから」
「うん?」
「昼間暑いと、仕事後のビールが進んでしまいましてね」
「うん」
「涼しい夜のうちに飲んで騒いで、起きたらもう暑い時間なんですよ」
「そうだろうね」
「二日酔いの俺に夏の太陽は容赦ないもんで」
「ふむ」
「涼しくなってから、と思うともう夕方や夜なので、散歩がてらここに顔を出して次の日の仕事のために早めに帰るわけです」
「ふぅん?」
「納得いってない?」
「車でも買ってあげようか?」
「はあ? なんでそうなるの」
「日が遮られればいいのかと」
「大げさすぎる」
「ああ、酔って運転されたら危険だな。ではタクシー代?」
「さすがにそれくらいは自分で出せます……」
「冬の間は寒くても来てくれていたのに。私は太陽に負けているわけか」
「勝ち目のない壮大な戦いだな」
「私に会いたくないわけではないということはよくわかった」
「それはなによりで」
「それならば、なるべく私が君のもとへ会いに行くとしよう」
「は?」
「君が外に出なければいい話なんだろう?」
「あなたはいつも勝手に俺の部屋に入ってくるけど、許可のない部外者の立ち入りは一応禁止なんですよあそこ」
「たまに美しい女性たちがお呼ばれしているのを見るが」
「えっ、誰の部屋」
「彼らの名誉のためにも私が口を割るわけにはいかない」
「えぇ……」
「君の部屋にも紅茶を準備しなければ」
「いやいやいや」
「ベッドも狭いし新しいのを……」
「いやいい、結構です。なんで一緒に寝る前提なの」
「だって君は私といるといつも……」
「ああ、もう。いいよ。わかった。もっと来るから」
「夜のうちなら涼しいだろう」
「仕事後の同僚との乾杯はお預けってことね」
「そうは言っていないよ。頃合いを見て迎えに行こう」
「余計だめです。ちゃんと来るから大人しくしていてください」
「わがままだな」
「なんで俺が呆れられる感じになってるの?」
「結局私はここで君を待つしかないわけか」
「そうなりますな。ていうか、いつも待ってたの。よく外出もしているようだし、一人を満喫しているものかと」
私のかわいい子猫ちゃんモンプティシャトン、私はどこにいようといつでも君を待っているとも」
「……」
「固まってしまった。太陽のせいかな」

2022.07.08 「太陽のせい」