いつまでもかみ合わない

「サーシャ、起きて」
「んぇ、……シャルマン? ……! なんで?」
「やあ、おはよう」
「えっ、どうやってここに入った?」
「君、官舎いえでは裸で寝るタイプなんだね」
「は? いや? わぁ! 違う! これは酔っ払って帰ってきてシャワー浴びてそのまま寝たからで!」
「そう? 風邪を引くから気をつけて」
「えっ、なに、ほんと、なにしに来たの、どうやって入ったの。ていうか今何時? 外まだ暗くない?」
「今は朝の四時半だ。さっき散歩をしていたら市場の女性にりんごをたくさんもらったのでおすそ分けに来た」
「四時半、ほんとだ、まだ夜中と言って差し支えない時間ですよ」
「そうだね」
「そんな時間にわざわざりんごを。そうですか。ありがとうございます。りんご大好き。ちなみに俺はさっき寝たばかりです」
「うん、起こしてすまないね。一人では食べ切れなくて」
「ははぁ、ありがとうございます。同僚にも分けます」
「じゃあ、また」
「ほんとにそれだけで来たのか、驚き過ぎてなにも言えない」
「ぐっすりおやすみ、サーシャ」
「あ、待って、結局どうやってここに……」

「こんにちは、こないだはどうも。突然の来訪で驚いたよ。ところで先日は話している途中で突然意識が途切れたんだが、あれは魔法的ななにか? 久しぶりにあんなにぐっすり寝たよ。二日酔いもなかったし。あ、りんごありがとう。みんなでおいしくいただきました」
「やあいらっしゃい。お気に召したならよかったよ。おいしかったろう、あのりんご。シブーストとアップルパイを作ったけど食べるかい。ジャムもあるよ」
「ええいただきますとも。なにもかも腑に落ちないけど、シブーストとアップルパイに免じて忘れることにします」
「準備を手伝っておくれ。紅茶を淹れるからお湯を沸かして」
「承知」

2021.09.24 初稿
2024.02.08 加筆修正