私が先生だった時、身に付けたこと。

自分が幼稚園教諭だった時に、全力で身に付けたこと。それを忘れたくないと唐突に思った。七年間で心を削りながら身に付けた、子供との接し方。目指すべき方向。

1.この活動をする目的は?

日々頭に描き、プランニングする幼稚園の日案、週案、月案、年間計画。来週はどんなことしようかな、去年の今頃はこんなことしてたな。でも今の子供たちに合うかな?そして、その活動は何のためにするのかな?そんなことを考える。素敵な題材、素敵な歌、それがどれだけやってみたくても、それが今自分の目の前にいる子供達に合っているのか、そして、どういった目的を達成するためにその活動を入れるのか、奥の奥まで考えて吟味しないと、その場限りの、繋がらない活動になってしまう。活動を次の活動に繋げるってことは本当に永遠の課題だった。だってこれは、遠くまで見据えて、尚且つ、今の現状を見つめて、どう繋げていくかが見えていないと繋げられない。気持ちも、内容も。もちろん向こう見ずで始めたことが思いもよらない方向に転ぶこともあるから、好奇心は忘れずに。でももし迷ったら、まず、何のためにするのか、それを考えてみて。

2.記録が一番

説得力が一番強いのは記録。何時何分誰がどうしてどうなった。この記録が詳細であればあるほど話の説得力は増すし、その積み重ねが信頼に繋がる。だから、記憶と記録を同時に行う。目で耳で全力で記憶する、そして、保育が終わった瞬間から周りの先生たちと記憶の補完を行い合って、それを時間を置かずに記録する。記録が、身を助ける。月の終わりにメッセージも書きやすいし、一年の終わりにも、指導要録書きやすい。最初は何でも書いたら良いけど、だんだん慣れてきたら的を絞って書くと、見返す時に振り返りやすい。

3.優先順位を常につける癖をつける

今一番何が必要か、今一番誰がどこに必要か、今一番、今一番を常に考え続ける。常に自分の手の中に複数の命があることを覚えて、それらを全力で保全し、より良く交わらせ、確実に親の手元に返す。この恐ろしいような一連の流れを毎日毎日行うことは、確実に心を磨耗するけれど、それでも喜びが常に寄り添う。優先順位と、それを考える速度を上げ続けることは、命の保全に必ず役立つ。今何が必要か、考え続けて。

4.待つ、ということ

踊らない。歌わない。喋らない。座らない。そんな子がいる。でも、その子が、周りを「よく見ていた」としたら。その子は今「見て学んでいる」時かもしれない。そういう時、それを妨げてはいけない。一ヶ月後、半年後、一年後、もっとそれ以上かもしれない。「見る」というコップがいっぱいになった子供は、今まで見ていたことを自分で行い始める。それは生き生きと、もしかしたら他の子よりも細部まで出来上がった状態で。花が咲くとき、芽が生えるとき、それは神様しか知らない。

5.抱きしめること

幼稚園で幼児心理学の研修を受けた時に聞いたお話の中で印象的だったこと。幼稚園でずっと大人の周りにまとわりついて離れない子は、「底無しの愛情不足」状態にある子の場合が多い。兄弟が多かったり、親の仕事が忙しかったりetc。そういう子には何を言っても丁寧に向き合って話を聞いても「底無し」状態だからまとわりつき続ける。「そういう子は一回ギュッと強く抱き締めると良い。一瞬だけど満たされて、満足して離れて行くことが多い。」そう聞いて、今まで何人も何人もギュッて抱き締めて来た。びっくりするくらい効く。こっちがなんだか悲しくなるくらい効く。それまでずっと周りで先生先生って言ってた子がギュッて抱き締めるだけでニコって笑って遊びを見つけに駆けていく。抱き締めるためには今手にしてるものを全て置いてその子だけに向き合って2秒過ごさないといけない。しかし他の事をしながら薄く対応するより遥かに効果があった。
 抱き締める時に、気持ちが込められる余裕がある時もあれば、気持ちが全く込められない時もあった、でも全部子供達は喜んで「痛いよ〜」とか言いながらびっくりするくらい朗らかな表情になって遊びに行った。離れて欲しい時は強く抱き締める。これは本当に不思議なくらい効く、技のひとつだった。誰にでも何度でも効いた。こういうことをしてもらってないんだな、こんな私の思いがこもっていないぎゅっていうのでも嬉しいって感じるくらい。そう思った。そしてニコニコと満足げな子の顔を見て、自分の中では作業の一環みたいに抱き締めてしまったのに、とか、申し訳なくなることもあった。
 技はたくさんある。どれも、子供達を嬉しくさせる技。技を使う人間の思いに関わらず効いてしまう技。でも、この技を使う全ての人が、心に余裕を持ってそれにあたれますように。そう思う。

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