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輸送モニタリング

輸送ダメージが繰り返し発生した事はないでしょうか?

その際にフォワーダーに聞いてもキャリアに聞いてもダメージの発生場所が特定出来ない事があります。こうなると有効な対策も出来ず損害が増えるばかりです。

そんな時に行うのが輸送モニタリングです。輸送品質の改善になりますので、今回はこちらの解説をしていきたいと思います。


モニタリングの必要性


輸送中の貨物に付き添って輸送状況を確認する事は非常に困難です。年に数回しか出荷されない貨物であれば最初から最後まで立ち会うことも可能ですが、現実は繰り返し何度も出荷される製品の方が圧倒的に多いですし、立ち会ったとしても制限エリア内等で確認できない場所も多数あります。輸送状況は到着した製品を確認するしかありません。

これも無傷で到着すれば問題もありませんが実際には一定の割合でシッピング・ダメージは発生します。この時に対策を求められるのですが、原因特定が中々出来ないと対策も出来ません。輸送中は多くの会社や人の手に渡り輸送されます。ダメージを与えましたと自主申告してくれるのは言い訳できないほどの事故が起きた時くらいで、中々ダメージ原因は分からないものです。

実際にダメージがあったとしても外装に損傷がなかったり、運んでいる本人も気が付かない場合も多々あります。

そんな時には輸送状況をモニタリングし、どこに問題があるのかを記録することでおおよその原因が想定できます。これを輸送業者に共有することでダメージの抑制にも繋がります。

輸送モニタリングは輸送品質向上のために非常に有効な手段なのです。

モニタリング概要


モニタリングに必要なものは加速度センサーです。安価なものでショックウォッチもありますが、これだと衝撃を受けた事実は分かりますが、何処で衝撃を受けたかは分かりません。

電子的に記録が取れる加速度センサー、記録計が必要になります。

加速度計は非常に多くの種類がありますが、今回紹介するのはG-MENです。これはXYZ方向の加速度に加えて温度、湿度も記録できます。宇宙でも使われた実績もあり信頼性も高いです。アルカリ乾電池で動くため危険物にもならず非常に使い勝手がいいと思います。ただし乾電池で駆動するためマイナス温度には対応していません。

G-MENの外観(株式会社スリックHPより)

この加速度計を梱包内、コンテナ内に内蔵することで輸送中にどのような力が、いつ、加わったか確認できます。

リアルタイムで確認できる通信機能付きのものもありますが洋上やコンテナ内ではデータを取得できなかったりとトラブルも多く私はうまくいかなかったです。これらを総合してこの加速度計が最適と考えています。
(もし良い計測器をご存知でしたら教えて下さい!)

該非判定


小さなセンサーですが輸出の場合には該非判定は必須です。

とは言えメーカーも該非判定書を発行してくれますし、前述のG-MENであれば16項のみの該当です。難しいモノも含まれていませんので社内の輸出手続きに従って該非判定を行えば十分でしょう。

もし、より高度なセンサーを利用するのであれば注意が必要です。

また通関インボイス、パッキングにも記載が必要ですので忘れずに申告しましょう。

モニタリング結果


計測器からは以下のようなデータが取得できます。

取得データのグラフ(株式会社スリックHPより)

XYZ方向のそれぞれの加速度、温度、湿度が時系列で保存されています。

輸送情報と合わせて分析すればどこの作業で発生したか、どのような角度で動いたかが一目瞭然です。これにより必要な対策も検討できますし、梱包の改善点もより明確になります。

課題


このモニタリングの大きな課題は、記録計の回収と返送です。これができることが大前提です。製品によってはこれが出来ない案件も多いと思います。例えば顧客に納入する製品で顧客から取り出し返送の協力を得られないケースも多々あります。

また大きなフォークでゆっくりと穴を開けた場合には検知できない時もあります。加速度が小さい場合です。重量のあるもので押されると加速度が無くても穴を開けられるからです。

そして返送の輸送費が掛かります。その輸送費を下回る小さなダメージに対してのモニタリングも適切ではありません。

モニタリング自体が出来るか?加速度が加わるダメージなのか?損害額は手間とコストを掛けるに値するのか?実施前には十分な検討が必要です。

まとめ


これは物流の改善の一つです。輸送品質の向上には有効だと思いますので実施する事をお勧めします。

またモニタリングは毎回実施ではなく定期で実施が良いと思います。事故が起きてからでは手遅れの場合もありますので、計画的に行うのが良いでしょう。

そして、これらのデータは各物流業者に共有する事で、自ら対策するモチベーションにもなります。

これらを提示した経験では、見せる前は「ウチではダメージ出るようなハンドリングしてませんし、ダメージ記録も無かったです、どこで発生したか分かりません!」と主張していたものが、データを見せた後だと「調査して対策を報告します…」と態度が180度変わります。
データの心理的な効果は大きいです。

輸送業者も実施して品質向上を図れればいいのですが、輸出入の場合だと書類の準備が必要で荷主の協力無しには実現出来ません。荷主、輸送業者共に輸送品質改善に向けて一緒に活動をしてみて下さい。

以上、今回はここまで。
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