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海猿で寝不足

今日は、珍しく朝から眠くて、調子が今ひとつだった。

原因はだいたいわかっていた。きのうの夜中、3時頃まで、『海猿』のDVDを見てしまったから。たまに見たくなる。

以前はYouTubeにアップされている動画を探して見ていたのだが、著作権の許可を取っていないアップロードなのだろう。動画は繰り返し削除されるため、そのつど新しいものを探して見ていた。

2年位前、好きならばやはりちゃんとした映像を見るべきであろうと、一番好きな映画版最終話『海猿BRAVE HEARTS』のBlu-ray Discを思い切って買った。買ったのは、本編の他にメイキング等の特典ディスク3枚、そしてなんと台本までついている「プレミアムエディション」。

昨日も少しだけ見てみたくて、最初のエピソードを飛ばしたところから見始めた。で、結局最後まで見てしまい、見終わってから、もう一度戻って好きなシーンを何か所か見返してしまい、結局3時になり寝不足。

何回見ても泣けてくる。一本で何回か泣く。本当にもう制作者の意図どおりだと思うが、感動してしまうのは、彼らの「絆」感。「仲間」よりももっと強い、お互いを信じる気持ちだ。

もともとシリーズには、海上保安官の強いバディ感がテーマとして通底している。バディは相棒の意味だが、スキューバダイビング等では、二人一組で互いの安全を確認するためのシステムを言う。これは映画版第一作目の、潜水士になるための海上保安大学校の教育の中でも強調されているテーマだ。

それが今回のストーリーでは、さらに漁師や貨物船等も含めた、海で生きている人の共通の価値観にまで拡げて描かれている。海の男たちは、「助け舟」という言葉で言われるように、海で誰かが窮地に陥った時には、無条件に自らを投げうって手助けに向かう。決して仲間を見捨てないのだ。
そこに、今回はさらにこれでもかというくらいに、窮地に陥った旅客機と乗員乗客全員を見捨てないというストーリーを重ねている。これはもう、泣かない訳はない。

海猿は、フジテレビ制作の実写版は映画『海猿 ウミザル』、のちテレビドラマ版『海猿UMIZARU EVOLUTION』、その後映画第二作『LIMIT OF LOVE 海猿』、そして一度は完結編とされた映画第三作『THE LAST MESSAE-海猿』、最後に最終作となった今回の映画『海猿BRAVE HEARTS』がある。

原作は漫画で全11巻、これも全部読んだ。原作の漫画は粗削りで、各話もハッピーエンドで結ばれてはいない。遭難者を救うことができなかったり、主人公の仙崎の葛藤は、答えを見つけられないままに、ずっと続いている。物語の展開は、取材や実話をもとにしていることがかいま見え、実際の救難の仕事はこれに近い葛藤を抱えているのだろうな、と思う。

実写版では、第一作目は若くて元気が良い海猿を描いている。「海猿」は呉の海上保安大学校の若い潜水士候補生を、その粗野な振る舞いを揶揄して地元ではそう呼ぶ、という話がストーリーの中にある。海上保安庁内では海猿という言い方は、俗称としてもないらしい。第一作目では、主人公である仙崎(伊藤英明)と環菜(加藤あい)の出会いのストーリーが初々しい。

ちなみに、のちに仙崎のバディは吉岡(佐藤隆太)となるのでその印象が強いが、実は仙崎の最初のバディは大学校での工藤(伊藤淳史)であり、彼は第一作目の途中までしか登場しない。その後のテレビ版では仙崎のバディは特殊救難隊から出向のクールな池澤(仲村トオル)であり、仙崎は巡視艇「ながれ」の潜水士、吉岡はまだ潜水士にはなっておらず、同船のコックだった。

また仙崎は最初から特殊救難隊のようなイメージがあるが、テレビ版までは潜水士、映画二、三作目の鹿児島(第十管区)勤務で機動救難士、最終の映画版で、漫画版の終わりと同じように、エキスパートである特殊救難隊員になっている。

三作目は漫画版には全くないストーリーであるが、やや非現実的な内容で、部分的に変にコミカルな演出があったりと、やや違和感がある作品だった。三作目の仙崎のバディは服部(三浦翔平)だった。

最終話で仙崎と吉岡がバディとなるが、この二人の信頼関係が体育会系的ですがすがしい。副隊長の嶋(伊原剛志)や隊長角倉(神保悟志)はストーリーには大きく関わらない位置にいるが、年長者としてのいい存在感を醸し出している。


さりげない短い映像だが印象に残るのは、この記事の冒頭にも添付した、暗い海中から水面に向かう潜水士達の作る輪を下から写す映像だ。各話の中にさし込まれている、信頼の絆を象徴しているシーンとなっている。水の光の中で、潜水士たちのフィンが揺れている美しい風景。
今回のストーリーでは、終わりの方、仲間を助けに行った潜水士をサポートする減圧ステージ(急浮上により致命症となる減圧症を防ぐために、水中で一定時間とどまるためのゾーン)を作るために水中にとどまる潜水士たちの輪。その輪が、大深度から浮上する仲間を迎える。海中から水面を見上げる青緑の光。


私がこの光に象徴されるストーリーに憧れるのは、同じ生活や体験で育まれる強い共感と共有された価値観。そして、無条件に信じ合える仲間たちだ。

気持ちがリラックスしている日の夜中、今日はしみじみしたいなと思ったら、本棚の右上、一番大事なものをしまってあるガラス戸から、金色の海猿のパッケージを取り出す。黒霧島のロックをつまみなしでチビチビ飲みながら、また同じ場面で泣くのだった。

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本稿 Ⓒ2019 青海 陽
画像 Ⓒ海猿 BRAVE HEARTS


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