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『偏愛マップ』『喫茶店で2時間もたない男とはつきあうな』齋藤孝

 偏愛マップは、10年位前に、齋藤孝と漫画『だめんず・うぉ~か~』の作者倉田真由美の対談集『喫茶店で2時間もたない男とはつきあうな』の中で、「こよなく愛してやまないものマップ」として紹介されていた。今回『偏愛マップ』が一冊の本になっていることを知って読んでみた。

 この『喫茶店で2時間もたない男とはつきあうな』という挑戦的な題名の本は、かなり面白く読んだので、よく覚えている。
 本の中で、齋藤孝は女性の好みを聞かれて「公共性のあるみたいなニュアンスの人かな」と答えていた。そのイメージは、「自転車置き場で倒れている自転車があれば、自分のせいではなくても起こしているような人」と。こういうデリケートなニュアンスを拾い上げる言葉が面白い。
 一方、倉田真由美は化粧っ気のない地味な女性を、「参戦していない女」と称し、「女はまず参戦すること」。「着飾り、そして光に集まる蛾のような男たちの中から良いのを選ぶ方が効率が良くアタリが多い」と。参戦しないでおいて「出会いがない」は甘えだし、寄ってくる数が少ない中では「ハズレを拾う」と。意見に全く賛同できるかは別にしても、こんな風に世間の様子をストレートに表現する感じが、私の日常にこのような会話の機会がないだけに面白かった。
 題名の「喫茶店で2時間もたない男とはつきあうな」の意味は、男の傾聴力を言っていたと記憶している。

 偏愛マップでは、「偏愛」しているものを紙の上にできるだけたくさん具体的に書き出す。書き方に決まりはなく、自由だからこそ、それぞれの個性が表れる。そして、これをお互いに見せ合うと、短い時間でお互いを身近に感じながら知ることができ、どんな人とでも仲良くなれるというもの。著者が大学の授業で繰り返し使っているが、成功率100パーセントだという。


 以前、『喫茶店で2時間もたない男とはつきあうな』を読んですぐに、自分の偏愛マップを描いてみた。好きなものばかり書き出すのだから、それは楽しい作業で、誰にも見せる予定はないので、かなり自分の深い所にまで意識の手を伸ばして描くことになった。この作業を通じて、自分でも知らなかった自分への気づきがある新鮮なマップが描けた。(この時のマップの内、公開できる方のものの画像を一度は添付したものの、あまりにもパーソナルな情報だったため公開を躊躇。別の機会にすることとした)。

 齋藤孝の著作には、自分の未知の部分を意識にのぼらせる方法のエッセンスが書かれているものがある。多分、私はその部分に共感して彼の本を読んでいるのだと思う。『3色ボールペン情報活用術』等も同じ理由で刺激が多く、書かれた方法を自分でも試してみていたし、今もそのニュアンスを生かした読み方をする時がある。
 その方法とは、本を読む時に青赤緑のボールペンで線を引き、思ったことを書きながら読むという方法。私がいいなと思ったのは、緑の使い方。自分の中の何かに触れたところを緑にするのだが、確か齋藤孝はそれを「フックした」と呼んでいたと思う。「琴線に触れる」とか「インスピレーションを喚起される」というような言葉で表されることだろう。私はこのような、自分でも知らなかった自分を意識化することで新しいものを生み出す感覚が好きなのだ。

 今回読んだ本では、マップの方法や学校や職場での活用例などが書かれていた。人とのコミュニケーション・ツールとしてマップを活用している。また、著者が深く関心を持っているのであろう人たち(岡本太郎、向田邦子、寺山修司、ジョンレノン、坂口安吾)のマップを著者がイラスト入りで描き、自らの偏愛を読み解いていた。
 偏愛マップは、おそらく書いた本人が一番楽しめるものだろう。また、興味のある過去の著名人のマップを作ってみることで新しい発見があり、その作業を通じて相手をもっと近くに感じられるのだと思う。

 もう一度、最新の自分のマップを描いてみようかな。


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本稿 Ⓒ2019 青海 陽
添付画像:偏愛マップ 齋藤孝 NTT出版 2004 p9、p28より引用



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