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好きなものに正直に

高校に入学してすぐできた友達ふたりとカラオケにいった時のこと

互いの好きなものをまだよく知らない内のカラオケというのはとても酷だ。よく歌われているカラオケランキングから適当に曲を選んで、誰にでも聞き馴染みのある曲を歌う。まあ、はじめはこんな出方が吉で、ここでロックバンドのデスボイスを響かしてしまっては高校生活も終わった同然なのである。

ある意味、緊張感の漂うカラオケを楽しんでいた。

突然、友達の1人が「メランコリック」といった曲を歌いだした。
聞いたことはない。画面の映像に可愛らしい女の子のイラストが映し出されている。私ともう1人の友達は「?」だったし、のることもできないまま、ぼーっとみていた。

歌い終わった後、「いやあ、これボカロっていうんやけどね、2人やったらはまってくれるかなって思ったんよ。」と彼女は照れくさそうに言った。

これあの”ボカロ”か!私はその当時、ボカロをまったく聞いたことがなかったけれど存在は知っていた。なぜ聞かなかったのかというとボカロ=オタクが聞くものという偏見を持っていたのだ。

その時は「へーそうなんや!いい曲やね」とか言ったかもしれない。頑張って歌ってくれたのだから否定はしなかった。だけれど私はもう一度聞いてみようかなとは思わなかった。

また別の日も彼女はボカロを入れて2人の前で歌った。

そしてそのカラオケ後、私はなんとなくボカロをYouTubeで調べていた。自分でもびっくりしたけど、胸に突き刺さるものがあった。そこから関連動画に続きいろんな曲を聞いた。

あれよあれよと完全にはまった私は翌日学校で「実はなー昨日めっちゃボカロ聞いてん」と伝えるともう一方の友達もまんまとはまっていた。
その日から3人の唯一の共通点”ボカロ”ができた。性格も部活も違う3人だったけれど共通の趣味ができた。

けれど決して人には言わない趣味だった。表向きに私は邦ロック好きと公言していたし(それは間違いではない)他の2人もそうだった。

思えば私たちはあのころ、陽にいた。ボカロ好きを公言するとどうなるか、学校という閉鎖された環境の中だったから一目瞭然だった。クラスの中にはそれを隠してない子たちもいて、その子たちが疎まれ冷ややかな視線を受けていたからである。漫画やアニメやボカロが大好きでそれを内輪で話しているだけなのに。

もし私があの時、私も好き!と伝えていればあの子たちとももっと仲良くなれたかもしれない。オタクっていう偏見を少しでも無くせたかもしれない。

友達が新しくできるってことは知らない世界を教えてくれるってことだと思う。私はカラオケでボカロの魅力を知ったし、そこからアニメや漫画にもどっぷりはまった。2人と旅行前に薄桜鬼を大量に借りたこともあったっけな。そんな世界にはまっていくのはとても楽しかった。

大人になって社会に出たから言えるけど好きなものには正直でいい。隠す必要はないし、笑われても「いいから聞いて!!!」とかって言えばよかったな。高校生の私には絶対に無理だったけど…

今では以前ほど偏見がなくなったように思う。TikTokでボカロの昔の有名曲に合わせて女の子たちが踊っているのを見ると思わず見てしまう。いい世の中だなあ。ネットの普及ではまるものがどんどん増えていってる気がする。

昔の私へ。好きなことに自信もつべきだよ。
そしてあの日カラオケで歌ってくれた友人へ。
新しい世界を教えてくれてありがとう。

画像は大好きな友達です。

#キナリ杯



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