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短編 ヴァラナスの踊り

1 朝目を覚まし、発つのは今日じゃないと何となく決め再び目を閉じる。昼前まで惰眠をむさぼり、東南アジア特有の熱気に我慢ならなくなる頃合いにようやくベッドから這い出す。起き出したからといって特に何をするわけでもない。ただ、けだるい一日が終わっていくのを無思考に見送る。その繰り返しだ。  痒い。安宿の硬いベッドには必ずと言っていいほど南京虫が住み着き、旅人たちの生血を吸い上げる。痒いだけならまだいい方だ。発熱を伴ってリンパが腫れあがることを多くの旅人はおそれる。僕も例外で

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