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事業成長を最大化する4つの成長要因

Linkedin創業者のリード・ホフマンの著書「BRITZ SCALING」を読んでいます。なんで今まで読んでなかったんだろう...と後悔するぐらいの内容でした。

いつもであれば、一通り読んだ後に読書メモを書くのですが、自分の読書の整理も兼ねて、特定のパートについてまとめつつ、自分の考えをまとめてみます。

引用するパートは、「成長を最大化する4つの成長要因 」です。


成長要因1:市場規模

・ビジネスモデルで最初に考慮すべき基本的な成長要因は、市場規模だ。市場規模に焦点を当てるのは当然だと思えるだろう。市場が大きければ、ターゲットとなる顧客数も、顧客に到達するための効率的なチャネルの双方とも大きい。

・アルトマンはチェスキーのスライドを見て「いいだろう。ただし市場規模の見積もりはたった3000万ドルではなく、300億ドルにすべきだ。投資家はビリオン( 10 億)のBが好きなんだ」と言った。アルトマンはチェスキーに、ウソをついて無理な数字を出すよう勧めたわけではなかった。エアビーアンドビーのチームが自分たちのビジネスモデルを本当に信じているなら、3000万ドルはひどい過小評価であり、信念に合う数字を使うべきだというのだった。後にエアビーアンドビーの市場は、実際に300億ドルに近いことが判明した。

・市場の過小評価につながる可能性があるもうひとつの要因は、別の方向への市場拡大を考慮しないことだ。アマゾンは、「地球最大のオンライン書店」としてスタートした。しかし、ジェフ・ベゾスが目標としていたのはなんでも売っている「エブリシングストア」という野望であり、オンライン書店はそこに向かってサービスを拡大するための足場にすぎなかった。現在もアマゾンは書籍販売業界を支配する大勢力だが、サービスの拡大を続けてきたために書籍の売上総額の7パーセント未満である。

・新しい市場を創出するにせよ、既存の市場を拡大するにせよ、投資家が望む「ビリオン( 10 億)」に到達するためには、現状からそこに至る納得性のある道筋を示さねばならない。

市場規模はいうなれば、事業の収益の天井である。MATCHAが属するインバウンド観光業界の市場規模は、2019年で約5兆円。2030年で15兆円を政府の目標として掲げている。今はコロナの影響でほぼゼロになっている。

そこに対して、どのように課題を解決して、事業機会を作っていくか。どの課題から着手して、価値を提供していくかが鍵になる。

伸びていく市場だから、そこにメディアを作ったら儲かるわけではない。


成長要因2:ディストリビューション

・強力かつスケーラブルなビジネスに必要な2番目の成長要因は、ユーザーに届けるディストリビューションだ。シリコンバレーの人間は、スティーブ・ジョブズの言葉を借りれば「あり得ないくらいすばらしい」プロダクトの開発に集中している。プロダクトが優れていることは確かにポジティブな要因だ。プロダクトの品質がよくない場合については、後で検討する。あまりにも当然でロマンのない事実を紹介すると、優れた販売チャネルを備えた優れたプロダクトは、それらを欠くプロダクトにほぼ間違いなく勝つ。

・ドロップボックスは優れたプロダクトだが、流通チャネルも優れていた。私がホストを務める「スケールの達人」というポッドキャストのインタビューで、ドロップボックス創業者兼CEOのドリュー・ハウストンが「スタートアップの多くはディストリビューションの重要性を過小評価している」と語っている。

・シリコンバレーでは優れたプロダクトの開発に集中することが正統とされる。しかし、シリコンバレーで起業するスタートアップのほとんどは、プロダクトが完璧になるまで生き残れない。優れたプロダクトを開発することは重要だが、ユーザーを獲得するのも重要であり、次に優れたビジネスモデルを構築することも同じくらい重要だ。これは鎖であり、鎖の輪のひとつが切れたら鎖全体が用をなさない。

A 既存ネットワークの活用  スタートアップには、広告キャンペーンに使う資金もターゲットもないのが普通だ。そこで既存のほかのネットワークを利用してユーザーを獲得する独創的な方法を見つける必要がある。私がいたペイパルは主にイーベイでの決済で使われていた。当時、イーベイはすでにオンライン通販の最大のプレイヤーのひとつであり、2000年の初めには1000万人のユーザーが登録していた。われわれはイーベイの売り手がリスティングに「ペイパルで支払い可能」ボタンを自動的に追加できるソフトウェアを開発した。

・B バイラル性  バイラルまたは口コミによるユーザー獲得──ユーザーがプロダクトを気に入り、ほかのユーザーに推薦することで新しいユーザーが得られる。バイラルとはウイルスのことで、ウイルスの増殖に似たプロセスだとして名づけられた。バイラル性は、オーガニックに(実際にプロダクトを利用しているうち自然に)発生する場合もあるし、なんらかのインセンティブによって発生する場合もある。

・リンクトイン創業後、われわれはオーガニックな口コミを発生させる方法を見つけようとして多大な時間とエネルギーを費やした。ユーザーが友だちを招待してユーザーを増やせるようにする効率のいい方法だ。われわれが考えた方法のひとつは、アドレス帳のインポートなど、標準的な口コミ発生ツールをさらに改良することだった。たとえば、リンクトインがユーザーのアウトルックの連絡先に簡単に接続できるようにするソフトウェアを開発した。これでユーザーは付き合いの深い重要な相手を簡単に招待できるようになった。

・インセンティブは必ずしも金銭である必要はない。ドロップボックスの場合、オーガニックなバイラル性(ユーザーが非ユーザーとファイルを共有する場合)とインセンティブによるバイラル性(登録ユーザーに対する特典)を組み合わせる。

・われわれはクレイグズリストで行きあたりばったりに、5人のユーザーにドロップボックスを 30 分間使ってみるよう頼みました。 30 分たったら 40 ドルあげますと申し出た。貧乏人のユーザビリティテストですね。「ではこのメールアドレスでファイルを共有しましょう」と言ってみたわけです。残念なことに 40 ドル獲得するところまで行ったユーザーは5人のうちひとりもいなかった。 30 分近く使った人もゼロでした。われわれは愕然としました。「ああ、こりゃヒドイ。最低だ」と思いました。そこでエクセルのシートにダメなところを書き出したら 80 カ所もあった。それからこうした悪い部分を削り落とす努力にかかった。するとアクティベーション率が上昇し始めたんです。

いいプロダクトを作っただけではだめで、プロダクトが広がるようなディストリビューションを構築する必要がある。ここで上げられているのが、既存ネットワークの活用とバイラル性。インバウンドにおいても、この2つの観点を鑑みるだけで、いい打ち手がいくつも浮かんでくる。ディストリビューションを活かすためにも、誰の何を解決するか?をベースとしたプロダクトづくりに向き合い続けなければいけない。


成長要因3:粗利率の高さ

・起業家が見落としがちな重要な成長要因は、粗利益率の水準だ。粗利益率が高ければ会社にとって売上1ドルあたりの価値が高くなる。つまり、売上の中から会社が成長と拡大に投資できる資金の割合が高くなるということだ。

・たとえば2016年のグーグルは897億ドルの売上に対して546億ドルの粗利益を上げた。つまり粗利益は 61 パーセントだった。フェイスブックの売上は276億ドルに対して粗利益239億ドル、 87 パーセントだった。2015年のリンクトインの粗利益は 86 パーセントであった。前述のとおり、アマゾンはテクノロジー企業では例外的な存在だが、2016年の売上高1360億ドルに対して、粗利益は477億ドル、利益率は 35 パーセントだった。一方、2016年にGEは売上高1197億ドルに対して粗利益322億ドル、粗利益率にして 27 パーセントだった。つまり「利益率の低い」アマゾンでさえ、伝統企業の中で高利益率を誇るGEよりもさらに高い利益率を得ている。

・消費者はプロダクトの価格とそれによって得られる(かつ知覚できる)利益だけを考えるのが普通だ。つまりプロダクトの利益率が低いからといって、利益率の高いプロダクトを売るより簡単だということにはならない。それならできる限り利益率の高いビジネスモデルを設計するべきだろう。

・ここで、「可能な粗利益」と「実現した粗利益」の違いに留意することも重要だ。オンライン通販のアマゾンや中国のハードウェアメーカー、ファーウェイ、シャオミなどはブリッツスケーリングを実行するために、市場シェアの最大化を優先して粗利益率を下げた価格・料金を設定してきた。ジェフ・ベゾスは「ライバルの高い利益率はアマゾンのチャンス」と好んで語った。シャオミは意識的にマージンを1~3パーセントに抑えた。同社によればこの数字はコストコの粗利益率なのだという。ほかの要素が同じなら、投資家は今後粗利益を高くできる企業をすでに粗利益を最大化してしまった企業よりも評価される。

一番印象に残ったのは、消費者にとって利益率の高さは関係ないということ。消費者が求める便益とその対価が妥当であればいい。高い利益率はさらなる投資を生み、良いサイクルを作ることができる。


成長要因4:ネットワーク効果

・ネットワーク効果  市場規模、マーケティング、粗利益率はいずれも会社を急成長させる上で重要な要素だ。さらに最後に述べるこの要因が、スタートアップが長期にわたって成長を続け、永続的価値のあるブランドを構築するのに必要となる。それがネットワーク効果だ。この 20 年でインターネットが世界の隅々まで普及し、ネットワーク効果はこれまでの歴史で見られなかったレベルにまで高まっている。テクノロジーが経済の支配的な要素になった大きな理由が、ネットワーク効果だ。

・経済学者はこの現象を「需要側のスケールメリット」あるいは「正の外部性」と呼ぶ。 ネットワーク効果というマジックはプラスのフィードバックを生成し、結果として非線形の急成長と価値創造をもたらす。ひとたび確立したネットワークのノードになってしまうと別のネットワークのサービスに乗り換えることが非常に困難になる。

・結果として生じる「スケールの拡大が利益を増加させる」という現象は、トップとなったサービスや企業が「ひとり勝ち」状態をつくり出し、その分野の利益の大半を手に入れた状態で均衡を保つことがある。したがって、賢明な起業家(と賢明な投資家)がこうしたネットワーク効果を最大限生かすシステムづくりに努力するのは当然だ。

・イーベイ、フェイスブック、エアビーアンドビーなど多数のスタートアップがこのメカニズムを利用して支配的な地位を築いてきた。市場を支配するには、ネットワークがビジネスに与える影響を正しく理解することが必須となる。

・5種類のネットワーク効果

・1 直接的ネットワーク効果  使用量が増えると、価値が直接的に高まる(例:フェイスブック、ウィーチャット、ワッツアップ、その他メッセージアプリ)

・ 2 間接的ネットワーク効果  使用量が増えると、補完財の消費を促し、間接的にプロダクトの価値が高まる(例:ソフトウェア開発者はマイクロソフト・ウィンドウズOS、アンドロイドOSなどの市場支配的なオペレーティングシステムを採用することで、アプリケーションやプラットフォームの価値を高められる)

・3 双方向ネットワーク効果  あるユーザーグループによって使用量が増えると、別の補完的なユーザーグループの価値を高める。その逆も真(例:イーベイ、ウーバー、エアビーアンドビーなどマーケットプレイス・サービス)。

・4 ローカルネットワーク効果  一部のユーザーグループの使用量が増えると接続ユーザーの価値が高まる(例:従量制接続の時代に、一部の携帯電話会社では、加入者が毎月の通信量にカウントされない少数の「お気に入り連絡先」を設定できる。

・5 互換性と標準規格  あるプロダクトの使用が増えると、それと互換性のあるプロダクトが有利となる(例:マイクロソフト・オフィスのエコシステム内では、ワードの優位性により、docやdocxファイル形式が標準になった。このため、ワードパーフェクトなどのライバル製品は打撃を受け、オープンドキュメントなどのオープンソース製品が普及するのを阻止できる。

・経済学者は、企業は需要曲線と供給曲線とが交差する「均衡点」を通過しなければならないと言うだろう。ウーバーの場合は、その均衡点に素早く到達できるよう、赤字となるような低料金を設定して需要曲線を操作している。短期間で多額の損失を被っても、均衡点を過ぎれば長期的に利益を得られると期待しているのだろう。

ネットワーク効果を活用や当初から意識している日本のベンチャーはどれくらいあるのだろう?と思ってしまった。ITのベンチャー企業が、100億、1000億の事業を作っていくためにはネットワーク効果の設計思想を取り入れるのは必須だと改めて強く感じました。

最後まで記事を読んでいだきありがとうございます。毎日更新をしているので、よかったらまた読んでもらえると嬉しいです。