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なんで、MATCHAに出資してくれたんですか? - 栗岡大介さん

株主インタビュー第7弾です。月1回程度行っているこの企画ですが、自分としても株主の方の期待や視座をもらえるのが嬉しいです。

今回は栗岡大介さんです。今年の8月末まで、運用会社のレオス・キャピタルワークスでアナリストを務め、現在は独立。北海道・東川町の職員をしながら、様々な企業のアドバイザリーもしています。

3年程前に、レオスの藤野さんに出資の相談に行った時に、栗岡さんを紹介してもらってからの縁です。栗岡さんは個人的に物理的にも、心理的にも距離が近い株主です。今は減りましたが、「今日の夜、サウナどうですか?」と連絡をしあっていたぐらい。

今回は独立したばかりということもあり、栗岡さんが今何を考え、どう動いているか?についても聞いてみました。


7つの顔を持って、働いている

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栗岡さん、簡単に自己紹介をお願いします!

栗岡大介です。今、7つほどの顔を持っています。それぞれに一貫していることは「課題を希望に変換する」ことです。投資家としてもずっとこれを意識して働いてきました。

多くの企業は自身の業種業界の考えに縛られてしまい、アイディアを生む時間がありません。各社の抱える課題を異業種や異なる考えを持った人々と結びつけることで、課題を成長の糧に変えていく、正に「課題を希望に変換する」作業を行っています。

特に高齢化社会の「食」と「住」に興味があるので小売や不動産を、そして引き続き大きな社会課題である人手不足を解消する企業のお手伝いをしてます。多種多様な企業のお手伝いをする中で、一見すると繋がりのない所に解決の糸口をみつけ各社の持つ課題解決につなげたいと目論んでいます。

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私の特徴としては、中小企業や国内外のスタートアップの方々と働きながら、同時並行でガバメント(政府や地方自治体)へアプローチします。そして、双方を繋ぐことで、社会課題を事業機会と捉えるような仕組みを作っています。先ほど、中小企業と働くことが多いと言いましたが、ガバメントも人口1万以下の街にターゲットを絞っています。なぜなら、人口1万以下の町は人口減少とともに増え続けていくからです。

役場職員として在籍する東川町は人口8000名程度ですが、年々人口が増えています。私はよく、「東川町には日本の未来がある」といいますが、様々な施策を行政が主体となり、企業とも連携し作っています。東川町週2日、東京3日、他の地方2日程度といった形で働いています。

公共と企業の間にある様々な課題を、事業機会と捉え、そこで生まれた成功事例を、人口1万人以下の町にどんどん紹介させていただきたいと考えています。


人と景色とその人の発言がカチッとハマる瞬間を求めて

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ー いきなり濃厚な自己紹介をありがとうございます。栗岡さんは今も以前も、全国を行き来しながら働いていますよね。うちの株主全員に共通するところでもあるのですが、いい意味で公私混同というか。栗岡さんが旅をする時、何を意識しながら旅をしますか?

人に直接会いにいくことが多いので旅は「目的」ではなく、「おまけ」のような存在なのかもしれません。観光名所に訪れるのではなく、特定の人に会いにいく。その道すがら、美しい景色やおいしいご飯があればこれ以上ない幸せを感じます。

その人に会いたいから。会いにいく。会いたい人に会えると、その時間(とき)は特別なものにになる。旅と出会いは私の中で同義語ですね。

ー 印象に残っている旅はありますか?

印象的に残っているのは、7~8年前に高校時代のホストファミリーに会いに行ったことです。実は私、高校3年生のときにバッファローの牧場にホームステイしていました。カンザス空港から4時間車で掛かるぐらいのド田舎です。

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感動の再会でした。バッファローが何百頭といる中で、ネイティブ・アメリカンの話をしてくれたんです。ネイティブ・アメリカンは、5世代、300年〜400年先のことを考えて、物事を考えてきたといいます。この話がとにかく印象的でした。社会人として悩んでいるときに、「何の為に働く?」を大自然を前に考えさせられました。

人と景色と言葉がカチッとハマる瞬間があると思います。私は、その瞬間を求めて生きてる気がするなぁ。


重いビジョンを、ポップに進めていく姿勢

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栗岡さんらしいエピソードをありがとうございます。今回の本題です。なんで、MATCHAに出資してくれたんですか?

一番最初にお会いしたのは3年前。MATCHAが掲げているビジョン「日本の価値ある文化が時代とともに残っていく」というのは僕の中で必須だと思ったんです。本当に多種多様な文化がある日本は素晴らしいと思うと同時に、それが時代とともに失われていくことが悲しかったんです。

MATCHAの素晴らしい所は、この非常に重いビジョンを、ポップに進めていくところです。ヘビーな問題をヘビーに捉える人は多いけれど、皆さんには、しなやかにかろやかに、何よりコツコツやろう!という姿勢があったんです。

インバウンドが急増する中で企業が成長するから投資したわけではなく、日本文化が直面する課題への向き合い方に共感しました。今みたいなコロナの状況は、MATCHAにはチャンスだと思いますよ。なぜなら「失われる文化」が経済的な理由で急増するからです。そんな時代だからこそ、課題を事業機会と捉え、私もMATCHAと一緒に挑戦したいと思っています。

これはメタファーですが、こないだ京都の金継ぎ職人にお話を伺いいました。昔の人は茶碗の金継ぎされた箇所を景色と呼んだそうです。どんなに素晴らしいものでも壊れてしまう。しかし、繕う技術さえあれば、壊れることを受け入れ、その中に新たな「美」の可能性を見出すことができる。そこに茶人や武将は「景色」を見出したんだと思います。

だから、どんな文化でも、壊れる可能性はあることを理解する。だから、壊れることを恐れて、現状維持を決めることはかえって崩壊を招いてしまいかねない。

MATCHAの役割は、既存の文化の使い方を沢山の失敗も積み重ねながら模索することかもしれませんね。上手くいかなかったら金継ぎのように修繕して、残していけばいいんです。リスクを取って、文化の未来の「景色」を課題だらけの今に見立ててください。

なくなっていく文化に目を向けていくこと

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MATCHAに期待していること、まだこれやれてないことなど。他印象に残ったエピソードとかがあればお聞きしたいです。

課題を希望に変える会社に育つことですね。日本の価値ある文化が時代とともに残っていく社会をつくる為には、まずは、なくなっていく文化にも目を向ける必要があると考えています。

それは死を感じ、生を学ぶこととにどこか似ている気がします。

投資家時代に葬儀会社の社長になぜ終活セミナーをおこなうのか、質問したことがあります。その社長曰く「人間は死を感じた時に、初めて生きることに向き合うようになる。」と言われて、なるほどと思ったことがあります。

これから無くなってしまう文化というのは、多くうまれるでしょう。これは日本だけでなく世界的な流れです。世界では少数民族しか話さない言語がなくなり、同時に文化も絶えてしまっています。日本に目を向けても地域特有の訛りがなくなり、風習がなくなり、それらをベースにつくられてきた文化が無くなってきている。

少し前置きが長くなりましたが、MATCHAはまず、なくなっていく文化に目を向け、発信していくこと。そのプロセスの中で、一体皆さんがどんな文化を残していきたいかを見出したらいいんじゃないかと思うんです。


騙されてもいいくらい人を信頼する

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栗岡さんは自分にとって一番物理的にも心理的にも近い株主です。言い換えると、MATCHAを近くで見てくれている株主。栗岡さんから見て、青木が足りていない所は何だと思いますか?

他者をもっと、真っ直ぐに信用してみることですよね。だまされてもいいと割り切る勇気を持つというか。青木さんは、良く言えばスマートなんだけど、悪く言えば打算的なのかもしれません。

文化ってきっと損得勘定の中では生まれてないと思うんです。もちろん経済合理性も重要な要因ですが、もっと土着的で人間的なところで生まれています。だから青木さん自身がもっとドロドロの人間くさい部分に飛び込んでいくことが重要じゃないですかね?

まずは無条件に飛び込む先を信用してみるというのが大事なんじゃないかと。それは会社のメンバーに対してもそう。信頼をベースに語る。もっと深く信頼したり、騙されたりしてもいい。

信頼することって投資の中でも一番重要なことだと思うんです。私は青木さんを信頼している。摩擦を恐れずになんでも言う。青木さんも、なんでも話す。


予測できない社会をどう楽しむか?

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ー ありがとうございます。上記の質問を株主インタビューでするのは初めてなのですが、グサグサきますね。栗岡さんが良くする発言として、カオス(混沌)という言葉があります。栗岡さんにとって、カオス(混沌)とは?

私は混沌を愛しているわけではないです。ただ、カオス理論という考えが好きなんです。

カオス理論:
単純な計算で将来の動きを予測できそうな現象であっても、初期状態が少し違うだけでまったく異なる結果に到達してしまう、動きの予測が事実上不可能な現象を説明する理論。


多くの人々は世の中を予想しようとする。しかし、1つ前提条件が変わるだけで、予想は大きく外れてします。だから予想できることはないことをまず理解することが重要だと、投資家をしているときに感じました。また今、事業家としても同様のことを思っています。

では、予測できない社会をどう楽しむか?色んな知識やネットワークを持つことがいいと思うんです。刻一刻と変わる前提条件に応じて、少し先の未来に対処すればいい。

ネットワークを構築するにはやはり信頼が重要になります。独自の強みを持っている(本人が弱みと思っていてもいい)を信頼をベースにつなげていく。業種業界限らずネットワークをロングテールにつなげていって、臨機応変に人々の見せ場を創っていくようなイメージです。

そのためには、異なるものに寛容であること、そして多種多様なものを潤沢に持つことが重要になると思います。寛容性と潤沢性を持つことで、この不確実で混沌とした世界に、美しい「景色」を広げることができるのではないでしょうか?

最後に

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久しぶりに栗岡さんと真面目な話をした気がします。レオスにいる時よりも、言葉がシャープになって、飛距離が上がったような。やや粗めに書き起こしましたが、その雰囲気が少しでも読んでくれた人に伝わったら嬉しいなと思います。

栗岡さん自身が実験的に、新しい生き方を切り開こうとしている。栗岡さん自身も日本が持っている課題を、ポップに、軽やかに解決しようとしているのが随分と伝わってきました。

「コロナでは、人々が無条件に信頼できる環境を作ってしまったら強いよ」と言っていました。この言葉に向き合って見ようと思います。栗岡さん、朝から濃密な1時間をありがとうございました。またサウナ行きましょう。


今までの株主インタビュー

株主インタビューは、今回で7記事目になりました。他の記事もいい内容ばかりなので、読んでもらえたら嬉しいです。ちなみに本インタビューの写真は、2018年4月に行ったMATCHA株主合宿で撮影したものです。

photo by @yansukim

最後まで記事を読んでいだきありがとうございます。毎日更新をしているので、よかったらまた読んでもらえると嬉しいです。