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ゴルフで生じる外傷・障害とその予防「肘の痛み」

みなさんこんにちは!
いつもご覧いただきありがとうございます!

今回はゴルフで生じる外傷・障害の中で、
「肘の痛み」をテーマに書いていきます!

ゴルフをしている方で、肘の痛みについてご存じの方は多いかと思います。
ご存知の方でも、今回の記事は解剖学的視点も交えて書きましたので、知識を深めるためにご活用ください。

前回はゴルフで生じる腰痛の予防・改善をテーマについて書きました。
その中で、スポーツ傷害や、ゴルフで生じやすい外傷・障害もまとめてありますので、よろしければそちらもご覧ください!


まずはじめに、
この記事では、スポーツによる怪我について解説するため、「外傷」「障害」という言葉がたくさん出てきます。
肘の痛みを解説する前に、このワードについてご説明します。
※腰痛の記事でも同じことを書いてありますので、そちらを読まれた方は飛ばしてください。

スポーツによって生じる怪我を総称してスポーツ傷害といいます。
スポーツ傷害は大きく「外傷」と、「障害」に分けられます。
外傷は、捻挫や肉離れ、打撲など一度に大きな衝撃が加わって発生するもので、
障害とは特定の部位に微細な力が繰り返し加わり生じるもの(使いすぎ症候群:overuse syndrome)で、慢性的に起こるものです。

では、本題に入っていきます!

ゴルフで生じる肘の痛み

ゴルフで生じる肘の傷害は、スイングによって繰り返しの負荷がかかることで生じるため、障害が多いです。
肘の痛みは、ゴルフ肘と名前がついているのように、ゴルファーにはかなり多い障害です。
特に、肩周り、股関節の可動域が低下している中高年のゴルファーでは、肘への負担が増加して、肘の障害が発生しやすくなります。

ゴルフで生じる肘の障害には種類がありますので、1つずつ障害の発症メカニズムと予防策について解説していきます。


ゴルフで生じる肘の外傷・障害の種類


1.上腕骨外側上顆炎

①障害発症のメカニズム
肘の外側に痛みが出るものです。これはいわゆるテニス肘と呼ばれているものです。(テニスのバックハンドの時によく起こる障害であるため)
右打ちゴルファーでは左肘の外側に痛みが出ます。

これは、体幹部の回旋可動域の低下や、スイング時の力を下半身→体幹部→腕の順で上手く伝えられないために、腕の力でスイングをしてしまう、いわゆる手打ちの要素が強くなり、肘や肩の障害が発生すると考えられます。

ゴルフスイングでは、下半身→体幹部→腕の順で関節を動かすことができないと、上肢帯(肩甲骨から腕にかけての部位)でスイングを行わなければならなくなり、肘に痛みが出やすくなってしまいます。(手打ちになっている状態)
その際、グリップに過度な力を入れたまま、前腕を捻る動作と、前腕を強く伸ばされる動きが繰り返されることによって、肘の外側に痛みを出すと考えられます。

②障害発症の部位
上腕骨外側上顆炎では、長橈側手根伸筋短橈側手根伸筋などの手首を伸転させる筋肉や腱に、負荷が繰り返されることで微細損傷や炎症が生じます。

右腕の筋肉(後面)

③予防・改善について
上腕骨外側上顆炎は、肘に負荷が繰り返しかかって起こるもの以外に、前腕の筋力と柔軟性が低下して起こることも多いため、筋力や柔軟性を高めていく必要があります。

ただ、前腕の筋力や柔軟性を高めても、局所的なアプローチにしかならないので、ゴルフをすればまた肘が痛くなる可能性が高いです。痛みが出ているのは肘ですが、肘だけに問題がある訳でありません。発症のメカニズムでも説明したように、スイングに問題があるために、肘への負荷が繰り返され痛みが出てしまいます。

従って、根本的な改善をするのであれば、肘周辺の筋力、柔軟性の向上に加えて、下半身、体幹部の筋力、柔軟性を向上させることが必要です。
特に、下半身の中でも股関節は大きな力を出せて、且つ大きな可動域も必要となるので、股関節周りが硬くて筋力が少ない人は、筋力強化、可動域改善は必須です。

さらに、無理のないフォームで正しくスイングができるよう指導を受けて、スイングを見直すことも必要となります。

ゴルフで必要な筋力に関しては以前記事にしてあるので、そちらをご覧ください。
また、股関節、脊柱の関節可動域については、腰痛の記事でまとめてあります。

肘の痛みが出た、またはすでにある場合、まずは前腕の筋肉の柔軟性を向上させるためにストレッチをしてみてください。ストレッチは簡単に取り入れやすく、安全にできるのでオススメです。

④前腕のストレッチ
前腕の筋肉(長橈側手根伸筋や短橈側手根伸筋など)のストレッチをご紹介します。
肘が痛い方は、まずはこのストレッチをしてみてください。

<やり方>
・片方の腕を前に伸ばして、もう片方の手で手の甲を押します。
・手のひらを自分の体に向けるように倒していきます。
・痛気持ちいところで30秒キープします。



2.上腕骨内側上顆炎

①障害発症のメカニズム
スイング時にダフることで肘に負荷がかかることが原因となり、肘の内側の靱帯(内側側副靱帯)や、手首や指を曲げる筋肉の付着部に炎症が起こるものです。右打ちゴルファーの方では、右肘の内側に痛みが出現します。いわゆるゴルフ肘と呼ばれているものです。
上腕骨外側上顆炎同様に、スイングを腕に頼ってしまったり、グリップを強く握ってしまうことも原因となります。

②障害発症の部位
上腕骨内側上顆炎では、橈側手根屈筋尺則手根屈筋長掌筋、円回内筋などの手首を屈曲させる筋肉や腱(筋の付着部は全て肘の内側です)、または肘内側側副靱帯に負荷が繰り返されることで微細損傷や炎症が生じます。

右腕の筋肉(前面)

③予防・改善について
予防改善については、前腕全面の筋(手首を屈曲させる筋肉)のストレッチ、また、上腕骨外側上顆炎同様スイングの改善、下半身・体幹部の筋力、柔軟性の向上などが必要です。

④前腕のストレッチ
前腕前面の筋肉のストレッチを紹介します。肘の内側に痛みがある方は行ってみてください。

<やり方>
・片方の腕を前に伸ばして、もう片方の手で手の平を押さえます。
・手の平を前に向けて、手首を曲げていきます。
・痛気持ちいところで30秒キープします。




まとめ

肘の外側が痛い方は前腕後面のストレッチ、肘の内側が痛い方は前腕前面のストレッチをまずはしてみてください。

根本最善するには、ゴルフスイングの指導を受け、無理のない正しいフォームを身につけることと、正しいフォームを作るために下半身、体幹部の筋力と柔軟を向上させることが必要となります。


最後までお読みいただきありがとうございました!


参考文献
・Paul J. Read,1 MSc, CSCS Rhodri S. Lloyd,2 PhD, CSCS*D. Strength and Conditioning Considerations for Golf. NSCA JAPAN
Volume 23, Number 10, pages 37-44
・岩本潤「ゴルフ障害・外傷の疫学」『臨床スポーツ医学 』vol.33 No.3 
・鈴木一瑛、浜田純一郎「ゴルフにより生じる障害・外傷」『臨床スポーツ医学 』vol.33 No.3 
・広瀬統一、泉重樹、上松大輔「アスレティックトレーニング学」文光堂2019/12/23
・西中直地、高情知之「ゴルフにおけるスポーツ外傷・障害予防とパフォーマンス向上の両立」『臨床スポーツ医学』vol.37 No.10

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