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<ワイド版>『北北西に曇と往け』を出版します

既報のとおり、2021年は『乙嫁語り』のワイド版を出版しますが、これに先がけて『北北西に曇と往け』のワイド版も出すことが決まりました。

◇ ワイド版をなぜ出すのか?

これまで日本の漫画業界では、作者が描いた原稿を発表するのはB5サイズの漫画雑誌で、単行本はそれを簡易にまとめたもの、という姿勢で出版を行ってきました。描かれた原稿が、大きなサイズで、いち早く読めるのが漫画雑誌。単行本はそれを小さく縮小して、まとめたものですから、流通しやすく、収納にも便利です。しかし、原画で描かれた迫力までは再現されていませんでした。
今回発売されるワイド版では、出版するサイズを、青騎士と同じ寸法の天地240ミリ×左右170ミリへ大判化しています。入江亜季さんは、自分が紙につけペンで描いた絵を、できればそのままのサイズで見て欲しいと考えていますが漫画原稿は1ページB4サイズと大きく、描くには大きくて良いのですが読むには不便。そこで、ペン画の熱量を失われない、そして読みやすい、最適なサイズを考えました。

また、近年、日本以外の国では、漫画単行本の仕様が高級化しています。『北北西に曇と往け』も海外版はサイズが大きく、紙も印刷もよいものが発売されています。

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※右は『北北西に曇と往け』ドイツ語版。日本のA5判に近く、カバーの加工や巻頭のカラーも再現されている。

前作『乱と灰色の世界』は今月、ポーランド語版が発売されましたが、届いてびっくりしました、上製本仕様と並製本の2種類同時発売。これでは、日本の原作版が比較的軽装のまま発売されているということになってしまいます。

漫画は、娯楽ですから、娯楽はなるべく廉価で、たくさん社会に必要とされます。昔は、漫画雑誌も安く、電車のなかで読み捨てられるものでした。現在は多くの漫画がウェブ上やアプリで読めるようになっています。それならば、紙で出す単行本は、反対に豪華版のような仕様で、長く手もとに置いておけるものがあっても良いのではないか。これがワイド版を出版するいきさつでした。

◇ エンターブレインの漫画の系譜

エンターブレインは、アスキーコミックスの昔から、漫画を刷る用紙と仕様にはこだわりを持ってきました。カバーの紙に和紙を仕様していた『幽玄漫玉日記』。あれはオモテが4色+特色2色、裏が特色1色という豪華なもので、雑誌掲載時のカラーを再現するために台割も細かく作られていました。また、『ワンダービット』や『いい電子』はAB判という変形サイズでコミックスを発売。ログインや週刊ファミ通に連載していた漫画はA5判に収めると極端に縮小されていまいますので、なるべく大きなサイズで読者に漫画を楽しんで欲しかった。ほかにも『BAMBi』や『少年少女』や『釣れんボーイ』など。『真・女神転生カーン』はカバーにホログラムが施されていたし、『銀河宅配便マグロ』はカバーに穴開け、そして『カスミ伝』シリーズは単行本時にシールまで再現されていました。我々青騎士は、長く続いてきたアスキー・エンターブレイン漫画の末裔ですから、やはり単行本作りにはこだわりを持っていきたいです。

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