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新型コロナ・緊急事態宣言はいつ解除?〜米国最新データからの予測

2020年4月7日、新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、7都府県に緊急事態宣言が発令された。各自治体から外出自粛や一部業種に休業が要請され、学校再開も延期されている。問題は、これからどの程度の期間の自粛・休業が続き、いつこの緊急事態宣言が解除され、感染拡大が収束、通常の生活に戻れるかだ。

幸い、現在まで日本は海外諸国と比較して遅いスピードで新型コロナウィルスの感染が拡がっている。中国や韓国、ヨーロッパの一部はすでに感染拡大のピークを超え、新規感染者数は減少傾向になる。つまり、どのように感染が拡大し、収束するかのデータも揃ってきている状況だ。後発の日本は、これらのデータを今後の対策に活かせるのはメリットだろう。

この記事では、米国ワシントン大学の保健指標評価研究所の予測データを基に、日本の緊急事態宣言がどの程度の期間継続し、いつ解除されるのかを予測してみる。

結論で言えば、現時点で海外各国並みの厳しく外出を制限しても、4月中は感染拡大が続き、収束は最短でも6月末以降。外出制限が十分機能せず、緩やかに感染が拡大し続ければ収束は夏以降になりそうだ。その場合、学校の休校期間は1学期すべてとなり、経済影響も甚大。だからこそ海外各国と同様、現時点で厳しい制限を行うべきではないだろうか?

●米国ワシントン大学の研究チームによる新型コロナウィルス感染拡大の予測データ

米国ワシントン大学の保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation)は、新型コロナウィルス感染症が各地でどのように拡大するかを予測するデータ「COVID-19 Projections」を公開している。

この予測データでは、アメリカ全土や各州、またヨーロッパの各国において

1. どの程度まで感染者数が増え、いつピークを迎えるか?
2. 1に伴い、入院の必要な重症者数はどの程度まで増えるか、またいつピークを迎え、病床数は足りるのか?
3. 同様にICUでの集中治療が必要な患者数とそのピーク、人工呼吸器の不足数
4. 死亡者数、死亡者発生のピーク時期

を予測、一般に公開している。

このワシントン大学の研究チームによる予測データは、世界最古の公衆衛生大学院を有する米国ジョン・ホプキンス大学の統計データと並び、各種ニュースメディアや米国連邦政府・各州政府当局者も注目する、信頼性のあるデータだ。

この米国ワシントン大学・保健指標評価研究所による新型コロナウィルス感染者数や収束時期を予測するプロジェクトでは、世界各国の政府や保険機関が公開する感染者数の集計データや年齢別致死率、世界各国の集中治療室(ICU)の病床数などに基づき、国別の予想入院患者数や死亡者数のモデリングを実施し、結果を予測データとして公開している。

●アメリカ国内各州の感染拡大~収束の最新予測データ

※以下、いずれのデータも本稿執筆時点の最新データ(太平洋時間2020年4月10日時点)

【アメリカ全土の予測】

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◎新型コロナウィルス感染者数のピーク…2020年4月11日
◎入院患者数が100名未満となるタイミング…2020年6月18日

アメリカ全土では、新型コロナウィルス感染のピークから入院患者数が100名未満になるまで2ヶ月かかるとの予測。さらに感染病床はピーク時に12,697床不足し、ICUのベッド数も8,018も不足、局所的に医療崩壊が生じると予測している。ちなみにアメリカ全土での死亡者数は本稿執筆時点(4月10日)で16,570人だが、8月4日までに61,545人となる予測だ。

【ニューヨーク州の予測】

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◎自宅待機命令の発令…2020年3月22日
◎新型コロナウィルス感染者数のピーク…2020年4月8日
◎入院患者数が100名未満となるタイミング…2020年5月8日

このニューヨーク州のデータから言えるのは、アメリカ全土の病床数不足のうち、約8割がニューヨーク州で起きるものということだ。つまりアメリカの医療崩壊はニューヨークを中心に起きている。

ちなみに本稿執筆時点ですでに感染のピークを過ぎているとの予測になっているが、実際にICUの入院患者数が減少し始め、今後は感染者数の減少が見込まれる。5月初旬には新型コロナウィルス感染症による入院患者数は100名未満になる想定だ。

【カリフォルニア州の予測】

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◎自宅待機命令の発令…2020年3月19日
◎新型コロナウィルス感染者数のピーク…2020年4月13日
◎入院患者数が100名未満となるタイミング…2020年5月12日

筆者の住むカリフォルニア州はピーク時でも感染症病床数を入院患者数が超えることはなく、ニューヨーク州のような医療崩壊は生じないという予測だ(実際、4月8日にカリフォルニア州知事は州内の人工呼吸器の一部をNYへ貸し出すことを発表した)。このまま推移すれば、5月中旬には新型コロナウィルスによる入院患者数は100名未満になる。

●ヨーロッパ主要国の感染拡大~収束の最新予測データ

また、アメリカ国内の各州のデータとともに、ヨーロッパ各国の感染拡大予測データも、米国ワシントン大学の保健指標評価研究所は公開している。以下で主要国のデータを紹介する。

【イギリスの予測】
◎自宅待機命令の発令…2020年3月23日
◎新型コロナウィルス感染者数のピーク…2020年4月15日
◎入院患者数が100名未満となるタイミング…2020年6月2日

【ドイツの予測】
◎接触禁止措置等の発令…2020年3月22日
◎新型コロナウィルス感染者数のピーク…2020年4月12日
◎入院患者数が100名未満となるタイミング…2020年5月27日

【イタリアの予測】
◎全土での移動制限の発令…2020年3月10日
◎新型コロナウィルス感染者数のピーク…2020年3月28日
◎入院患者数が100名未満となるタイミング…2020年4月30日

【スペインの予測】
◎非常事態宣言の発令…2020年3月14日
◎新型コロナウィルス感染者数のピーク…2020年3月29日
◎入院患者数が100名未満となるタイミング…2020年5月15日

以上、アメリカ国内やヨーロッパ各国の感染拡大の状況や最新の予測データを確認すると下記の2点が感染拡大から収束に至るまでの共通の傾向だ。

★自宅待機命令の発令からおよそ3週間で感染者数のピークを迎える
感染ピークから約1ヶ月半~2ヶ月で入院患者数は100名未満に減少、新規感染者もほぼいない状態

●日本における新型コロナウィルスの感染拡大~収束、緊急事態宣言の解除はいつ?

この海外に置ける感染拡大から収束にかかる平均的な期間を日本(の緊急事態宣言の対象地域)にあてはめると

◎緊急事態宣言の発令…2020年4月7日
◎感染者数のピーク…2020年4月28日ごろ
◎入院患者数が100名未満となるタイミング…2020年6月15日~30日ごろ

が1つの予測となる。しかしこれは最も楽観的なシナリオ
上記の米国ワシントン大学の予測データは、「収束まで人々の外出自粛が厳守される」前提のデータだからだ。

この点で日本の場合、以下の2点が違いであり、懸念点となる。

・4月7日に発令された緊急事態宣言の対象地域は7都府県限定で、他の地域のピークはさらに遅くなる(つまり日本全体の感染拡大ピークは5月以降になり、全国的な収束も7月以降)
・海外各国の自宅待機命令と比較して日本の緊急事態宣言(それに伴う自粛要請や休業要請)は強制力が弱く、住民の行動量が減らなければ上記予測より感染拡大期間は長期化する

このため「緊急事態宣言の解除は最短でも3ヶ月後の6月中旬から下旬」、またそれよりも長期化する可能性が極めて高いというのが妥当な予測だろう。第一波の感染が落ち着いても再感染拡大の恐れもあるため、解除判断も慎重になりそうだ。

つまり、学校の休校期間は1学期間すべてとなり、学校再開は9月以降の可能性が高い(現に欧米各国でもすでにそう判断している国が多い)。経済影響もそれだけ大きくなるからこそ今、厳しく外出を制限、感染拡大を抑え、収束までの期間を最短化する努力を全力ですべきではないだろうか?

上記の感染拡大や緊急事態宣言解除時期の予測を念頭に、自粛中の生活や仕事への取り組み方、子どもたちの教育などを考える必要がありそうだ。

4/14追記:収束・緊急事態宣言解除までのシナリオ

感染拡大が収束し、患者数が減ったとしても、緊急事態宣言が即解除となる訳ではない。再感染拡大を避けつつ時間をかけて徐々に自粛を緩和、感染が拡がらないことを確認した上での解除となるだろう。

ヨーロッパで最も早く一部の制限を解除したのがオーストリアで、小規模店舗の再開から段階的に緩和していく方針だ。

米国でも5月末または6月初旬からの段階的な制限緩和が想定される。

この“段階的緩和”が進めば、緊急事態宣言解除が現実的となるが、具体的にどのようなステップ・期間を要するだろうか?以下、アメリカの場合を想定、自宅待機命令の解除や正常化に向けたステップを予測してみる。

6月初旬(緊急事態宣言から4ヶ月):小売店舗など「Non-Essential Business」の営業再開、公園・ビーチの封鎖解除(マスク着用やソーシャルディスタンスの維持などの条件付きで)

7月初旬(緊急事態宣言から5ヶ月):レストラン・バーなど飲食店の店内飲食、ジムの再開(マスク着用等が難しいため小売店舗の再開より遅くなる、またテーブル間の距離を空けるなどの制限の可能性も)

8月中旬(緊急事態宣言から6ヶ月):学校再開(何とか新学年のスタートから再開したいと皆が考えているはず、ただしマスク着用・毎朝の検温などの制約はありそう)

10月以降:海外渡航などの一部制限緩和

万が一、途中で再感染拡大が起きれば、1つ前の段階に戻らざるを得ないため、各ステップで影響を慎重に見極めつつ進めることになるはずだ。

また問題はアメリカが再度海外諸国に対して「開国」するタイミングで、日本がどのような状況にあるかが気がかりだ。10月時点でもまだ日本国内で一定の感染者が残っている状況では、日米間の鎖国状態は継続する可能性もある。日米間の人や物の流れの正常化は日本国内の感染状態にかかっているとも言えそうだ。

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