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ディスクレビュー:『破戒と想像』/ kein


kein『破戒と想像』初回盤


音がブラッシュアップされてる!
たぶんあのままkeinが解散することなく活動を続けててメジャーデビューしてたと仮定して、ここまでカッコいい音になったかと思うと違うと思うし、あのままメジャーデビューしてたら数年で解散してたと思うし、逆に今回の再結成はなかったんじゃないかとさえ思う。
SE的な立ち位置の1曲目以外は全て活動当時の曲だという。事実、収録曲は過去にリリースされた『朦朧の実』にも収録されていた“グラミー”と“暖炉の果実”は再録で、残りは初の音源化(そのはず)。
とは言うものの先行でMVが公開された“暖炉の果実”は、『朦朧の実』収録のオリジナルを聴いたリスナーとしては、アレンジが全くの別物と言っても過言ではないくらいで、字幕を見ても「これ本当に“暖炉の果実”?」などと正直疑ってしまったくらいだ。
サウンドは90年代V系の香りを残しつつ、オルナタティブロックのテイストを融合させた感じがする。これはaieさんのキャリアと、再結成で合流した、ポストロックのバンドでも活動しているというドラムのSallyさんによるところが大きいんじゃないだろうか。
今作のエンジニアを担当したgirugameshのЯyoことЯyo Trackmakerが当時のkeinをどれだけリアルタイムで知っていたかは分からないが、この90年代V系サウンドのテイストをブラッシュアップさせたカッコいい音にできるのはさすがЯyo Trackmakerの手腕。
いや、これは仮定の話だが、むしろ90年代当時のkeinをよく知らなかったから、逆に変な先入観なくkeinの音をブラッシュアップさせることができたんじゃないかとさえ思えてきた。
V系をよく知っているエンジニアの強み。
(知る知らないは別にして、もちろんさすがに当時の音源は資料として聴いただろうけど)

keinが過去に残した会場限定盤を除くCD音源は3曲入りシングル『朦朧の実』のみ。
23年越しのアルバム発売となったわけだが、この『破戒と想像』を聴いて、むしろメンバーが音楽人生だけでない人生のキャリアを重ねた今こそkeinがアルバムをリリースした好機だったのだとさえ思った。

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