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Must haveとNice to haveに分けて話そう /ファシリテーション一日一話 21


神戸空港が近いので、よくスカイマークにお世話になる。この航空会社は必要充分なサービスを低価格で提供してくれる。機内誌を見ると社長のごあいさつページに「何をしないかを決める」という文が載っていて、さすがだな、と感じた。

マイページ開発秘話

長年のスカイマーク利用者が待望していた「マイページ」がどのように話し合われて開発されたかが記されている。というのもスカイマークはフライトの予約の旅に、フルネームと電話番号とクレジットカード番号をゼロから記入しないといけないので、ヘビーユーザーには、ちょっと面倒だったのだ。

マイページ開発を任命されたプロジェクトチームではMust have(なくてはならないもの)とNice to have(あるとうれしいもの)に分けて議論を進めたという話。社外取締役をつとめる楠木建さん(一橋大学ビジネススクール特任教授)のアドバイスで「センスのある経営者は<何をしないか>を決断できる。優れた競争戦略は<何をするか>ではなく<何をしないか>を決め、競合他社との違いを作る」という話を受けてのことらしい。まさに、フルサービスではなく必要ミニマムなサービスをお安く提供するスカイマークの経営理念にもかなった助言。開発チームでは、この2つを出し合って、どの機能を盛り込むか議論したらしい。

ただ、機内誌34ページにある詳細記録を読むと色々な部門から出されるMust haveとNice to haveの基準が違い、その調整に苦労したらしい。なんとかすりあわせて「こういう機能を持たせたマイページにしよう」と決めることができてから、システム開発部がそれを可能にする落とし込みの作業に入る。幾度となくテストを繰り返して、無事リリースするまでの苦労話が綴られていた。この機内誌、ご自由にお持ち帰り下さいとあるので、よき会議のお手本教材として頂くことにした(一部ゆとりあるので、入手希望の方は声かけてください)。


機内誌も分厚すぎず,シンプル。スタッフの顔が見えて、旅に出たくなる。

肝心の基本機能は使いやすいか?

思えば、私たちの身の回りのものにも、やたらとNice to have(あるとうれしいもの)を詰め込んで、機能過多になっているのを見かける。スマホにせよ、自動車にせよ、電子レンジやパソコンの表計算ソフト、スマホで外出先からエアコンをかけられるなんちゃらホームに至るまで、たくさんの機能を盛り込んでくれるのはいいが、その1割も使いこなせずにいる。それどころか、たくさん機能やボタンがありすぎて、肝心の「電話をかける・とる」という基本機能が、お年寄りには難しいスマホになったりもして、なんだかなぁと思うことも多い。いかにMust have(なくてはならないもの)を、分かりやすく提供することが大事か。

思えば、昔の電子レンジのほうが使いやすかった。〇分ぐらいかなーと感覚的に手でひねって、時間になったらチンとなる。皿を取り出せて掃除がしやすく、丈夫で壊れない。いらん機能をつけすぎて操作性の悪い家電が、ちょっと多すぎる気がする。

皆さんも、何か開発の会議や、立ち上げのミーティングに同席することがあったら、Must haveとNice to haveに分けて話そう、と提案してはどうだろう。

なくてはならないものを、きちんと届ける。その上で、ほんのちょっと、あるといいものが添えてある。そんな製品やサービスを選べる社会に生きてゆきたいと、僕は思う。

2024/5/17 スカイマーク機上 能登半島付近にて



スカイマークさん、いつも安全なフライトをありがとう!

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