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第16回 南のシナリオ大賞①

2022年の8月も暑かった。「命の危険」がある気温だと連日報じられていた。
2020年に始まったコロナ禍も3年目。家にこもり、ネット配信で、ありとあらゆる映画やドラマを見まくり、ついには普段だつたら手を付けないスポ根アニメまで楽しんだ。
妄想のタネは頭にたっぷりと植え付けられ、
外出の予定もしばらくないし、自分でも何か書こう。
「今年は南のシナリオに応募してみようか?」と思い立つ。

子供の出てくる話にしよう、と決めて、あらすじを作り、先ずは書いてから読みなおす。
「なんだこりゃ?」という出来。でも、まだ時間はある。書ききれていないところを余裕で楽しく直していった。
さあ、そろそろ早めに応募、という前に応募要項の「ラジオドラマのシナリオ・例」を再確認した。
そこでやっと、自分の書式がおかしい事に気がついた!行間もト書きも、違う!
あわてて書式からなおしだすが、土台からの建て直し。当然、大工事になってしまった。さらに、それまでは見えなかったアラが露見し、気になり出す。ここも変、あそこもおかしい。
結局、数えきれないくらい書き直した。
暑さの中で、普段使っていない頭がヒートアップし、なんだかフラフラになった。
最後は「もう限界だー」と目をつぶり、応募フォームに送り出した。
祝!初志貫徹。
楽しかったシナリオ祭りは終わった。

季節が変わり、猛暑を忘れはじめた頃、
携帯電話に謎の番号から電話があった。
生憎、すぐに取れなかった。
当時、電話による各種犯罪が多発していて、
地元警察署から再三の注意喚起がされていた。
「知らない番号は怖い」と思い、そのままにした。
再びその番号から連絡があり、今度は留守電が入っている。
訝しく思いながら留守電を聞くと、
「南のシナリオ大賞の…」と録音が再生された。
「え??、まさか、まさかでしょう⁈」
青くなりながら、あわてて電話をかけた。

「あの、お電話とれなくて申し訳ありません。留守電を聞いて、折り返ししました」とシロドモドロの私に、電話の向こうの声がつげた。

「あ、実はね、大賞とっちゃいましたよ。おめでとうございます」

大賞受賞の連絡だったとは…。



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