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南のシナリオ大賞 オーディオ・ドラマ①

「南のシナリオ大賞」は、
大賞作品をオーディオ・ドラマに制作して、
日本放送作家協会九州支部のホーム・ページで
公開してくれることでも有名だ。
それも一年間!
これだけでも素人には身に余る光栄、
すごい魅力。
自分の書いたシナリオを
役者さんが演じてくれる!
夢のようでしかない!

人生で最初で最後の機会だ、と思った。
「頭から尻尾まで徹底的に味わいつくさねば」
年の功パワー全開で、ずうずうしさを押し出し、
収録のスタジオ見学をお願いした。

「お邪魔にならないようにしてますので、
見学させていただけないでしょうか?」
演出の先生は快く承諾して下さった。

この頃には、
コロナで混乱していた空の便関係もかなり落ち着き、マイレージ優待ですんなり福岡に。
収録当日、
福岡市内のスタジオに恐る恐るうかがった。
「強面の恐ろし気なスタジオ職人たち」
などではなくて、
優しそうなスタジオの皆さんが迎えて下さり、
一気に私の緊張がほぐれた。

収録のためオーディションで選ばれたという、
役者のみなさん、可愛い子役くんが集まり、
スタジオで収録が始まる。

役者のみなさんは収録ブースに入ると
スイッチが切り替わるらしい。
完全に役になり、演じている。
演出の先生が
「そこはこういう感じでお願いします」
と指示すると、
すぐに「そういう感じ」に演じ分ける。
役者さんって、なんてすごい!
音をたててはいけないので、
心の中で拍手、拍手。
雄大役の子役くんは8才(当時)。
でも、キャリアは4年と
お母さまからうかがった。
博多弁もネィティブなので自然だ。
「雄大って、こういう子なんだな」
と思わせてくれる。

収録が終わった頃、
私の中の「ちりんとくんの世界」が
しっかりと、リアルに、
3Dで立ち上がっていた。
音だけのドラマでも
こんなにイメージは広がるのだ。
「人間の声の力」がもつ可能性を強く感じた。

演出の先生は、役者さんの声の収録後も、
「まだまだたくさんの編集や効果音などの作業が残っている」
とのことだった。

小さな一つのシナリオを
オーディオ・ドラマ作品として作り上げる。
それには、こんなにたくさんのみなさんの
真摯な仕事が必要である、と、初めて知った。
感謝に頭が下がった。

帰路につく時間である。
今回の南のシナリオ大賞、
「最後の大花火、
オーディオ・ドラマ、たまやー!」で、
終わるのだな、と、
私はしみじみ感慨を感じていた。

しかし、
やっぱり「南のシナリオ大賞」なのである。
それだけでは終わらなかった。

演出の先生は、
最後にスパッ、っと、切れ味よく
こうおっしゃったのである。

「これを思い出にしないでくださいね!」






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