入居審査、理想と現実の違い ③ 強制執行編
私はしばらくぶりに自分の物件にやってきました。
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まず空き地に見た事も無い小屋が建っています……
もちろん私は許可した覚えはありません。
賃貸物件なのに、何故空き地に小屋を建てるのでしょうか?
このモンスター入居者の行動は、もう既に私の理解を遥かに超えていました。
古屋は4畳位のサイズで、一応窓やドアもあり倉庫として使っていたようです。
またその小屋と物件の窓からウッドデッキの様に、床を繋げていて
屋根まで作っていました。
賃貸物件で何の許可も無く、小屋と通路を繋げる建築物を作っている事に
私は入居者の思考回路が、全く理解できませんでした。
我々は玄関から家に入ると、そこには入居者の方達は誰も居ませんでした。
しかしソファや家具の一部などは、まだ残されている状態でした。
つまり入居者は夜逃げしたのです。
私はまず部屋の現状を確認する為にリビングへ行くと
広いリビングの床は、ビッシリ深い傷で覆われていました。
この家は入居前に全て新しいフローリングに張り替えて、入居募集をかけたので、たったの1年でこんなに傷が入るものかと目を疑いました。
そういえば以前、排水の詰まりが発生した時にリビングに石油ストーブが置いてあったので、あのストーブやソファ等の重量物を日常的に引きずって移動していたのでしょう。
このリビングのフローリングの補修は、完全には出来ないとすぐに分かりました。
小さな傷であれば、補修材で治せますがここまで広い範囲だと、不可能です。
そして私は2階に上がって、もっと深刻な状況を目にしました。
2階に在る6畳の洋室に入ると、とんでもなく臭いです。
そして窓をみると2面の窓に付いているカーテンレールが、グニャグニャにひん曲がって垂れ下がっています。
私はどう使えばこうなるんだろう? と、不思議でなりませんでした。
そして床のフローリングは傷が多数あり、一部は床の木目が剥げてしまっています。
またフローリングの溝に、オシッコが付いて乾燥した粉が付着していました。
そうです、入居者はこの部屋を大型犬の犬小屋にしていたのです。
恐らく犬に何の教育もしていなかったのでしょう、壁のいたる所にオシッコの跡が付いていました。
フローリングの一部が剥げているのは、犬が何度も引っ掻いたのでしょう。
ちなみに犬に関しては入居後に相談してきたので、部屋では飼わないという事を条件に許可しました。
この部屋を綺麗にするのは、相当大変だというのがすぐに分かりました。
私は頭を抱えました。
そうして、全ての現状調査が終了しました。
幸いトイレ、浴室、その他の部屋に関しては大きな損傷は有りませんでした。
ただリビングの窓ガラスに傷が入っていたり、コンロのゴトクがへこんでいたりと、細かいところは色々とありました。
既に気づいておられるかも知れませんが、一番の問題は
原状回復する費用の請求先です。
今回の保証会社の契約内容では、原状回復費用までは含まれていないので
入居者に請求する訳ですが、これが問題。
入居者は既に逃げてしまっていて、連絡も付かない状態です。
入居者は最終的に家賃を8カ月滞納していて、ガス代も3カ月滞納との事。
このケースではまず、原状回復の費用の回収は不可能です。
この業界の事を知らない人は、民事訴訟で勝てば
裁判所から支払い命令が出て、お金を取れると思っている人が居るかもしれませんが
現実の社会は、そんなにシステマチックには出来ていません。
そもそも差し押さえるだけの財産を持っていないから、家賃を滞納している訳です。
これ実は社会の修正不可のバグなんです。
だから詐欺師とかが、1度に何億か集めてその後逮捕収監されたとしても
その資金を回収して被害者に返金するという事は、出来ないのです。
やろうとしても、そういう輩は賢くて、資産を海外や見つからない場所へ
資産隠ししているので、服役後ホクホクで生活している現実があります。
つまり法律とは、あまりにも不完全なのです。
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