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ヘブバン4章前半がくれた感情(ネタバレあり)

昨日クリアしたばかりなんだけども、ヘブバン4章前半が本当に素晴らしくて何もしてないとずっとこのことばかり考えてしまう。
たすけてくれ~~~~

毎週更新結局できてないので3本分サマポケ旅行記を書いている途中なのだが、その前に今書きたい記事があった。
やはりKeyは自分の感情を揺さぶり続ける魂のブランドらしい。
というわけで実はまともに書いたことないヘブバン感想記事のようななにかです。

当然ネタバレがある。未プレイ未クリアは注意。






Keyの魅力といえば。
魅力的なシナリオ・キャラクター、豊富な作品外展開。たくさん挙げられる。
その中でも非常に大きなウェイトを占めていると考えている要素がある。

演出だ。
感動的なシーンを演出する音楽、キャラクターの表情や美しい背景を演出するグラフィック、1ウィンドウに収まる文字のテンポ……全てが噛み合ってこそ"泣きゲー"となり得る。いくら素晴らしいストーリーでも、演出が二流だったならきっとKeyはここまで大きいブランドになっていないだろう。断言できる。
Keyの看板作家でありヘブバンのメインシナリオライターである麻枝准は、文だけでなく曲も書けるからこそ、最高級にシナリオを演出する画面作りを可能としている。それだけじゃなく、作品作りに関して尋常じゃない拘りがある方なので、濃密な監修・ディレクションも行っている。定期的にシナリオを出さなければいけないソシャゲであるヘブバンにおいて、買い切りゲームと同じように全セリフの表情立ち絵の監修を行っているのは並大抵の覚悟ではできないことなのに……
ヘブバンリリースから約半年、クオリティが落ちるどころか目に見えて演出力が向上しているのは開発の尽力とライターの情熱があってこそだと思う。それがしっかり大ヒットに繋がっており、今回のようなハイクオリティ4章前半が生まれた事実が嬉しい。

ヘブバンには印象的な演出が数え切れないほどある。
特に印象的なものだけ挙げると、レッドクリムゾン戦で守ってくれる蒼井を見せられながらWhite Spellが流れる演出は何としても倒さなくてはいけないという気持ちになる。
蔵イベで日付が遡り、どんどん画面が霞んでいく演出は何もかも消えていく感覚をプレイヤーにも共有させていた。
そして今回、4章前半ラストの演出は、自分の心にぽっかりと穴を空けてしまった。

Day12で闘っている最中、ひたすらハラハラさせられた。もしかしたら、めぐみが死ぬんじゃないかなって。
だけど、ちゃんと命は助かった。さすがに3連続キャラクターを死なせる展開は安直って言われることもあるだろうからしなかったし、安心した。
けど、すぐにそれが間違いだと気づく。
今回はDay12で終わりじゃない。Day13まであるシナリオだ。
あと1日残っている。
5人が浮かれているパーティが終わった後、別の場所に泊まるめぐみ。
この時点でもう全てを察してしまった。

Day13に移り、穏やかな朝が始まる。
BGMが消えている。
これまで1章、2章、3章、イベストと歩いてきて、こんなに悲しい朝を感じたことはなかった。
司令官室への呼び出し、1人だけ起きてくるタマ。

その後、部屋を出た瞬間、流れ出す「贅沢な感情」。

ここが個人的にはKey最高級の演出だった。智アフのLife is like a melodyやABの一番の宝物を初めて聞いた時のような衝撃を受けた。
大作戦が終わり、今回こそ誰も欠けずに任務を完遂できた安堵からか、他部隊のメンバーは穏やかな日常を過ごしている。
それなのに、大切な何かが決定的に失われてしまったことを流れるバラードが否が応でも伝えてくる。
「それぞれの選択と新しい朝」という章題の意味が、ようやく判明する。
OPテーマが「Before I Rise」という曲名であることからして明らかなように、「目覚めること」を大事な要素として組み込んでいるヘブンバーンズレッドにおいて、この演出を持ってくる巧みさには感服させられた。
演出家麻枝准の真骨頂がそこにあった。

司令官室に到着すれば、やはり既に失われてしまったという事実が判明する。
「仲間なんだから会って直接話せば戻ってくるはずだ」と涙声になって叫ぶ茅森に、司令官はまだ間に合うと優しく諭す。
もうどうしようもないのだと雰囲気で分かっているので、この時点で心が痛い。

めぐみに追いつくと、パジャマを除けば本編で初めて彼女の私服姿が登場する。
デフレクタが発生しないその服装は、もう31A部隊の逢川めぐみがいない現実を一目で示している。
そこからの会話は、互いを大切に想い合う仲間だからこそのもの。
「仲間だから」と意気込んでいた茅森は、「仲間を守れなかったから」という理由を聞いてからは何も言えなくなってしまった。
仲間を大切に想うからこそ、無力な自分を許せないめぐみの優しさが、救世主になれない自分を追い詰め続けた。
その彼女の優しさに救われたタマが、「めぐみさんは私の救世主です!」と想いを叫ぶ。けれど「そっか。今度はタマが人類の救世主になったってや。」という言葉は"人類の救世主を目指した逢川めぐみはもういない"という事実を伝えてくる。
31A部隊は素晴らしい仲間であり居心地の良い場所である、という描写を積み重ねてきたからこそのシーンだ。

あとタマが最後自分の想いを伝える場面に移った瞬間ラスサビを流れ始める演出は某過去作を想起させるものだけども、本当に涙腺が終わってしまうので勘弁してほしい。
最後めぐみの顔が見えなくなり背中だけが映されてからヘリの乗降口が無機質な音を立てて閉まって曲が終わるのも、どうしようもなさをさらに強調していた。
記事を書きながらシーンを読み返してて思ったけど、最後のタマが涙声で若干聞き取りづらいところまで含めて名演技ですごい。徐々に弱々しくなっていく茅森や優しさと絶望が伝わってくるめぐみの吐露も素晴らしい。ここのディレクションの話をいつか聴きたいな……

この朝目覚めてからEDが流れるまでの一連の流れが、ヘブバンをここまでプレイしてきて一番好きなシーンだ。
贅沢な感情というKeyの歴史に残る名曲と流し方、美しいグラフィックやCG、声優の演技、RPGという自分で操作して移動するジャンル、3Dモデルの表情や動き、全てが噛み合って最上の切なさをこれでもかというぐらい高めていた。ここまでプレイしていて良かったと思えた。


ここまで半年プレイした中で、”当たり前”となっていた31Aが6人という事実をこういった形で覆してきたのは、かなり衝撃的だった。リリース初期に展開予想を色々してたけどこんなことは一ミリも予想していない。
キャラクター自身が闘って死んでしまう展開とはまた違う切なさがある。彼女が選択して去ることは、誰が悪いとかじゃなく(そもそもキャンサーが悪いとかそういうのは置いといて)、語弊があるかもしれないが"仕方のない"ことだからだ。茅森が最後ヘリに向かうめぐみを言葉で引き留めなかったように、その選択を尊重しなければいけないと思うから。
31A部隊の特徴として、3章対立して喧嘩した月歌とユキのように特別仲が良い関係でなければ互いに強制しないし干渉しすぎないところがある。だからこそ、4章前編のような人間ドラマができたのだと感じる。

31Aの穴には新キャラクターが入るのだろうか、それともナービィの真実を知ってしまったし打属性である月城が入るのだろうか、他の既存キャラなのか。色々予想はできるけど、今は6人を想うことで精一杯である。
いつかめぐみは再登場するだろう、とは確信している。「あなたは救世主」の予言は、きっともっと未来のシーンじゃないかとは考えられるからだ。もっと身も蓋もないことを言えば商業的に見てしないわけがない。これからの31Aの作品外展開どうするんだとなるし。まあ4章後編で帰ってくるのは急すぎるから早くても6章あたりかな……今のテンションならすぐ帰ってきてもめちゃくちゃ喜びますけど……

彼女はきっと帰ってくる。
なのに、どうしてこんなに今もどこか欠けたような気持ちになるのだろう。
ちょっとシーンを読み返そうとしただけで今も涙が溢れてくるのだろう。
おい、タマぁ!のいつものやりとりがこんなにも恋しくなるのだろう。

こんな贅沢な感情を味わせてくれるなんて。
だから、ヘブンバーンズレッドが好きだ。

もう世界中が敵になって
あたしに襲い来る
悪夢でも朝になって
消え去るならいい
目覚めても続いてく
この夢はなんだろう
神様も眠ったままだ

贅沢な感情/麻枝准×XAI

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