ロプノール 2022年6月22日の日記

anon株式会社の運営するメディア〈anon press〉さんに短編「ロプノールとしての島」をご掲載いただきました。

テクノロジーの網目は時が経つにつれて解像度を上げながら世界を覆いつくしていくが、同時にそれは忘却という行為が困難になることも意味している。今回の作品は、そのような仕組みのなかで世界の隙間へと零れ落ちていった存在/記憶を、改めて現代における救いとして語り直せないだろうかということを考えながら書いた。

〈anon press〉さんではこれまでにも難波優輝さんや十三不塔さんの短編、長谷川愛さん・江永泉さん・青山新さんによる座談会が掲載されている。どれも現代の人間にとってアクチュアルな問題をSF的な思考力を以って再考する/再考を促すようなテクストとなっており、非常に読みごたえがあった。「こうなるだろう」という未来予測だけではなく「こうなってほしい」という祈りをも現実の舞台に引っ張り上げるための文章には強く勇気づけられる。

上記の三記事はすでに無料期間が終わっているので、ご興味のある方はマガジンを購読してみるとよいかと思います。場が継続してほしいな、という気持ちももちろんありますが、より単純に文章の質も量も金額以上のものになっているのでおすすめです。青島の短編については6月29日まで無料配信となっておりますので、この機会にぜひよろしくお願いいたします。

めちゃくちゃステマしましたが利害関係は一切ないです。

上で「こうなってほしい」という祈りについての話をしたけれど、どちらかというと、そのような形の祈りが存在しているのだと素描してみせることがSFの得意としている方向性なのかもしれない。馬車に乗っている人間が求めるのはより速い馬車だが、新しく自動車というものを考案することで、そこに初めて新しい「こうなってほしい」が生じる。技術を扱いながらも技術決定論に陥らないためには、サイエンスとフィクションの両輪にバランスよく重さを傾けてやる必要があるのだろう。

今年の下半期はたくさん作品が発表できるような気がしていますので、応援していただけると嬉しいです。たくさんとは具体的には二桁くらいを意味しています。すでに傑作をいくつか脱稿していますのでご期待ください。キャパシティもまだ(このような日記をだらだらと書く程度には)余裕があるので、楽しい遊びやお仕事なども引き続きお待ちしています。なにとぞ。


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