「人間を書けている」を解く 2021年6月19日の日記
穂村弘の『野良猫を尊敬した日』と『きっとあの人は眠っているんだよ』を読んだ。たまにエッセイや読書録を読み漁りたくなる時がある。「人間を書けている」を巡る思弁が面白かった。小説という文章は、わかりやすい次元で捉えれば随筆や自伝などと比べて、そこに描き出される対象に少なからず他者性が含まれることになる。言い換えれば、小説は(まさにそれに対するアンチテーゼをしない限り、つまり「私」以外が一切登場しない私小説を書かない限り)構造上必ずどこかで「自分ではないもの」を書かざるを得ないのだ