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何故、脱いで絵を描くのか。

あおいうには女性性を売りにしたことなんてない。2012年から始まる作家活動12年間、一度もだ。

むしろ性の商品化には必死で対抗して活動しているとすら言えるだろう。怖いからだ。

本当に恐怖だった、女性として若さだけが消費されていくのが。

アーティスト活動開始は21歳の頃だ。
当時のインターネットでは自撮りを気楽に上げる文化はまだなかった。自撮りカメラアプリで加工機能等がついていなかったという背景があるだろう。
一部のフォトショップを持つ者や、本当に加工なしでも可愛い者たちだけが、ネットアイドル活動をしていた。

私はそんな情勢の中で、作った料理を上げるのと同じ感覚で、たまたまメイク自撮りをあげてみた。
自分の顔に自信はない。「身体醜形障害」の診断は確実におりる自信ならある。
そのくらい、自分の顔が醜くて嫌い。

しかし、嫌いというのは、好きの同義語でもある。
「本当の私はこんなもんじゃない、もっと可愛いはずだ」という強いナルシシズムからくる、醜形恐怖症ではないかと推測する。
身体醜形障害というのは、極端にいうと、ナルシシズムの病ではなかろうか。

顔が嫌いな中で自撮りをあげると、ふぁぼ、いいねがいつもより増えた。微かに嬉しかったが、次第に違和感を覚えはじめた。
誰も私の絵なんて興味ないのではと思った。ただ
若い女が絵を描いているのが物珍しく、また、話のタネになる。近づくきっかけになる。その程度の、口実にされた。
私にとっては人生そのもの、信仰の対象、アイデンティティである、「絵画」をだ。

私の見てくれや女という記号に条件反射的にいいねをして、コメントをする。「会えませんか?」「かわいいね!」「おっぱいでかい」「すっぴんも見せて」仕舞いには、「いくらですか」。

誰も私の心を、画面の向こう側に確かに存在する体温を、誰1人として感じ取ってはいなかった。私は確かに存在していて、血の通った人間で、あなたたちと変わらないのに。誰も私を同じ人間としてみてはいないのだ。

私は絶望した。

そうして、自撮りをあげなくなった。そうすると、

「アイドル的に美人画家として売ればw」
「もっと露出度高く谷間を強調すればw」
「その方がきっとオジサンに絵が売れるよw」
「お前は男を喜ばせることしかできないよ!絵下手じゃんw」
「なんか、よくわかんない絵だなァw落書きみたい!」

などと屈辱的な言葉を投げかけられた。

「アイドル的な売り方」、「美術業界の性的搾取」に強烈な忌避感を持った。若い女性作家やそれに群がる男性たちという構図に嫌悪を抱いた。
心が警報を鳴らした。
「このままじゃいけない。男性たちの欲望に負けてはいけない。」

一時期、私は反論しまくっていたが、まだ言葉が上手くなく、論理性に欠けていてますます馬鹿にされるだけだった。

みんなに「じゃあ、性的な絵を描くな」「自撮りをあげるな」と言われた。
性的なモチーフを描くのは私にとって重要なことで自身の根幹にもなる問題だから、それを止めることはできない。
性を描くことは私にとって、幼少期の抑圧と反動で、描かないといられない。
個人の信仰に関わる。

自撮りは、醜形恐怖症を乗り越える儀式でもある。
私は、自身のビョーキをなんとかしたくて、それをあげている。

女性からは「ブス」「デブ」「おばさん」と言われ、男性からは「もっと脱げ」「AVに出ろ」と言われる。

完全にネットのおもちゃだった。オイシイコンテンツやネタを提供しているだけで、私にとって良いことは何もなく、ただひたすら傷まみれになった。苦痛だった。

そんな中で、「むしろ、この現象を逆説的にアートへと変換できないか?」と考えた。

ほぼ裸体の露出度の高い水着やレオタードになり、自ら醜い太った肉体を晒して、人より大きい乳房で絵を描く。
そして、愚か者を炙り出す。

アートの現場で女性性を全面に出し、女性性そのものを冷笑するため、道化に徹する。道化である私は、観衆に性的な眼差しを持たれたり、消費・搾取の対象になるだろう。

それは、社会における女性の性的搾取問題を明るみにする装置なのだ。

美術に興味のあるフリをした人たちが私のおっぱいペインティングで大きな胸に喜ぶたびに、それは炙り出され、コンセプトがますます強化されていく。

そんなことを意図して、私は脱いだりおっぱいペインティングをしている。全裸でやらないのは、個人的な信条からだ。

多分これが全部伝わっている人はかなり少ないだろう。意外と人は言わないとわからない。絵がすごく好きな人であっても、コンセプトを全て伝えることはできない。書いたり話した内容も全てを分かり合うことは不可能だ。
人とは永遠に孤独な生き物だ。
だからこそ、人と人とがコミュニケーションを取ることが大事なんだ。私はまだ、対話することを諦めてはいない。
私が生きて話せるうちにどんどんみんなに私はの気持ちを、コンセプトを、伝えていきたいと思う。

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