❄『白と嘘』という物語を聴いた


紹介というよりも、完全に主観的な一ファンの読書感想文です。

『白と嘘』
作詞: 鈴木勝&RUCCA
作曲: ゆーまお

RainDropsセカンドミニアルバム「オントロジー」より




歌に物語としての力があり、『白と嘘』という情景をしみじみと散歩してきたような心地がします。

私は鈴木勝くんのファンなので、彼が共同作詞したこの曲がものすごく待ち遠しかった!
なのでこれ一曲をどこまでも噛み締めたい。

一緒に噛み締めましょう。あるいは読んで気になって下さったら本望です。
YouTubeでも一部視聴できます⬇

アルバム自体にまつわる感慨も沢山あって、それも改めて書けたらな。
本気で良い曲揃いです。 

オントロジー、発売おめでとう!




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『白と嘘』は雪の日のバラード

雨のアルバムに、そっと雪の歌。
雪もまた雨の一形態である。

雪の日の景色に、別れる二人の心情が重ねられた一曲。
「優しい嘘と真実」というテーマに対して、雪のバラードを選んだ勝くんの感性がすてきだ。


アスファルトには雪解けが重たく滲み、ため息さえ白く煙って、いつもの景色がただただ白になる。うらぶれた街角さえも嘘みたいに綺麗に覆われる。ちょっとこわいくらいに。
そう、雪は感傷的だけど否応なくて、ときどき怖い気がする。

雪は等しく隠してしまう。
二人でここまで歩いてきた足跡や、タバコの吸殻や、カラフルな商店街のアーケード。音も吸われてしんとして、何もかも白。
空から降るものの等しさは残酷で、それは優しくもあるのかもしれない。ふんわり舞う粉雪だとしても、刻々と淡々と世界を埋めてゆく。
そんな雪の平等さや優しさ、儚い美しさに、関係性の終わりが重ねられている構造がよかった。


そして二人の物語

この恋人たち、多分、すごく優しい人たちだと思う。作詞者である勝くんの人間性が滲んでいる感じもする。

だって、惚れたのは雨を晴れにするような笑顔だ。そして最後に伝えたかったことがそれだ。
別れるほどに息詰まった今でも尚、その思い出が眩しくて、恨み嫉みではなくてその恋の一番うつくしいところを最後の贈り物にした。
プレゼントのリボンを結ぶように「綺麗」と笑む、そんなふうに恋の結末を結べた。
いい子たち。大人しいふたりの良い恋だったんだろうな。

雪の日に、雨さえ晴れに変えるような、
夏の雨上がりのような笑顔を想う。
泣きたいくらいに遠いなあと思う。憧憬や思い出は現在から最も遠い時空だ。
その記憶はきっと一生美しいまま彼の中に残り続けるだろうけど、寒空はそこからあまりにも遠い。

あの日から、日々も関係性も降り積もっていって。
でもそれは泥でぐちゃぐちゃというよりは、しんしんと積雪のような息詰まりなんだろう。優しすぎて不器用な2人なんだろうなと想像される。
もう心の熱が冷めてしまったとか、どうして一緒にいるか分からなくなっちゃったとか、多分伝えられる人は伝えられるんだけど、伝えないことは嘘で不誠実ですらあるけれど、
多分この二人は優しさと不器用さ故に言い出せずにいた感じがある。
雪の予報と、それから予感も当たったんだろう。

一番遠くから、一番美しい雨上がりを想うナンバー。




(そこに続くのが、とびきり晴れやかな雨上がりの曲であるオントロジーなの、よくないですか?)

恋愛小説の解釈みたいになっちゃった。
感傷を与えてくれる歌は多いけれど、まずこうして人物とストーリーが立ち上ってくるところ、彼らの感情を吟味することになるところが鈴木勝くんらしい創作物だなと思いました。
聴いてぶわっと情景が込み上げてきて、ああ物語力!って胸がひたひたになってしまった。
描写や関係性まで通徹して「雪」の性質を感じられる切なくて美しい曲だった。

言葉選びだと、
「綺麗 嫌い 綺麗」 で韻を踏むところが好き。
口にすると「きらきら」とも聴こえてきて素敵だ。
綺麗と嫌いが並列するところもこの歌らしいし、この二人らしい。この嘘はどこか偽善なんだけれど、こうして雪に八つ当たる酷い気持ちのときでさえ、雪を綺麗だと思ってしまう心根が。

はじめは「ひらひら」降るばかりの雪が「君 過去 未来」「何故 何故 何故」、しんしんと無慈悲に降り積もって、物語の載せられた後にはじっとり感情を含んだ重みになるのも良い。

音楽については門外漢の感想になってしまうけれど、ピアノの音色、歌声、メロディが一体となって、繊細にエモーショナルに雪の情景に寄り添っていてとても良かった!
MVの彼らの見守りそのもののようだ。

あと同時視聴で忠告された通り、
めいじーちゃんで心臓くちゃくちゃになったし緑さんのいつもより優しい歌声にぎゅっとなった。勝くんの儚い透明感はバラードにしっくりきていて良かった、本当にピアノが似合うな。
(願わくば、いつか勝くんの『白と嘘』弾き語りが聴きたい。)


挙手して作詞に挑んだり、失恋を研究するために失恋小説を読んでしばらくブルーになっちゃったり、そういうエピソードも好きでした。
クリエイター鈴木勝のファンなのでこうして聴くことができてとても嬉しかったな。

早く!ライブ会場がペンライトで真っ白に染まるところ、見たいな~~~~! 


・オントロジーについては、インタビューが軒並み熱いのでこちらもオススメです。


追記(2021.3.31)

RainDropsのアコースティックライブ『開花宣言』、めちゃくちゃ良かったですね。
白と嘘もありました。
各楽器の音のディテールがしっかり伝わってくる、ライブ感のあるメロディアスで繊細なアレンジ。そこに彼らの生の歌声が乗っていて。みんなちょっと緊張気味だったのが微笑ましかったですが。

勝くんの歌声、またよくなっていたな。
特にラスト、原曲よりもしっかりと明日へ踏み出している感じがあり、儚さも残しつつ爽やかな決意を感じられて。

そしてフェイクに不意打ちされた
伸びやかな高音のハミング、サアッと天使の梯子が降りてきてた。それぞれの明日、天使に祝福された。
美しい高音、それ勝くんの一番の武器じゃん、スッて出してくるじゃん。
有難う、最高だ……。

ライブ感想noteも改めて書きたいです。FLにしておこうと思ったのに良すぎて無理だったよ…

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