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800字日記/20221016sun/096「夕暮れサイクリング」


夜通しの読書で心がたかぶった。ドストエフスキーを読んだせいだ。昨年の冬はトルストイのアンナカレーニナに熱中した。古典は頭が熱くなる。

掃除をして、ベランダにいる猫を部屋に入れて、15時に家をでる。

ロードバイクを転がして道路にでる。日差しが強い。右手におれて海へ向かおうとロードバイクにまたがる。風はあったが体が熱ってきてパーカーを脱ぐ。

橋の途中でとまる。欄干から顔をだして下の中洲をのぞく。竹やぶから雀のような声が大量に聞こえる。ムクドリかもしれない。アスファルトを走っていると前方でシギが早足で横断する。

また立ちどまる。目の前の田んぼ一面、稲穂が黄金色になって、頭を垂らしている。圧巻だ。ロードバイクにまたがる。「トトロの塚森」とよぶこんもりとした神社の杜(もり)をぬけるとカラスが一斉に飛びたつ。刈り入れが終わった田んぼにコンバインがぽつんと置いてある。

田んぼ道をぐるりとはしって、いつもの川の土手にでる。この土手はこの間まで、彼岸花で真っ赤に染まっていた。団地の脇に、昼顔が咲いている。Yさんに写メを撮る。

県道を渡って漁港に着いた。黄色のシャツに青いパンツを穿いた少年が赤いプラスティックのバットでぶんぶんと素振りをして遊んでいる。あいさつをする。海沿いの国道にあがって北にはしる。潮風がきもちいい。

大分空港と、そのさきの国土交通省の建物をすぎて、なだらかな坂の途中にある焼肉屋むさしの敷地に隣接する、裸の女の銅像が立つ公園のような敷地に入って石のベンチに座ってひと休みをしていると、中型バイクが二台、入ってきた。ひとりはヘルメットを脱ぐとながい髪を宙に舞わせた。女性だった。デートだろうか。二人とも気持ちよさそうだ。そのまま僕は空を見上げる。真っ青な秋空。ツーリング日和だ。

帰りにいつものコンクリート橋で止まる。朝日のようなオレンジ色の夕陽が川面に揺れる。三月には引っ越す予定だ。あと何度、見られるか。

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