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小説『消えた小説』全記録

日本文藝界初の「メタ私小説」を書く タイトル『消えた小説』その全取材ノート あらすじ 2023年3月。男は四十六歳。ADHDで双極性躁鬱だ。三年引き籠った九州で男はFX詐欺に遭…
⬛︎10名限定 アピールポイント「消えた小説」が書籍になった場合、書籍よりも安く読める。 随時、最新…
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#厨房

ラストシーン、伏線の回収、いろは歌(GM)

7079文字+有料 「アキトくんの見た真実。それを書くのが作家じゃないの? 」  男はノリの母親の言葉を思いだした。  それは男の無意識がさせた行為だった。取りだしたケータイの録音のスタートボタンをタップし、「喜ちゃん飯店の裏手、乾燥機の前」と吹きこんで、前ポケットのなかにすべりこませた。 「アナタのそういう所がね、アタシは嫌いなんですね。オザワさんね、やっぱり、やっぱりオザワさんも大人だからわかるよねえ? あたしがなにか言ったら、働かせてもらってるんだから、経営者の

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男の過去、同級生の仏前 / エピローグを三章に差しこむ(GM)

6680文字+有料 「おい。ペットボトルを袋かなんかに包んでやれ」  父の母に言う声は落ちついた声音にもどっていた。  ブルルル。  両手でにぎるスマホが、ふるえる。胸をひっかいた爪の隙間が血で赤い、その指でスマホをハンズフリーにして、床に置いた。天井を見上げて息を大きく吸った。大丈夫。だいじょうぶ。天井を見、じぶんに言って聞かせる。呼吸は整ってきた。 「オザワくん? 」  声は、ノリの母だった。ノリは男の高校時代の同級生だった。三一一があった二○一一年に、肺がん

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パニック発作と群馬弁を道具に(GM)

3488文字+有料  婚活アプリでもそれはおなじだった。男にとって正直に自分を語ることは針の筵(むしろ)に正座をして焼けた油を呑む行為に等しかった。九州では特殊詐欺に遭ってクレジットカードは停止され、川舟祭でたまたま知った役場の多尾に勧められて生活保護になって婚活はやめた。アプリは三ヶ月つづけたがそれが限界だった。男は婚活アプリを辞めることにした。  退会期限日の三日前にマッチングしたのがミチだった。男は捨て鉢になって鎌倉で実家暮らしをする五十路未婚年増に書いた文面を、そ

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男のアルバイトへの動機。(GM全記録)

5629文字+有料 「あきれちゃうよ、この子は。ブツブツと呪文みたいにおんなじことばかり聞いてさ」  男は黙った。 「リョーマ。もうさ、オザワさんにさ、洗い場に入ってもらってよ、いろいろと慣れるまで」 「はいよ」 「アンタも、言われる前にパッてみて。洗い場入ってよ。ほかの他人の仕事ばっかりのぞいて見てないでさ」 「はい」  男は洗い場にもどった。  そこから男はまた記憶はない。だれかになにかを言われた気はする。が、この時間帯の記憶は脳からすっぽりと欠落していた

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店の雰囲気、男の緊張、オクサンのキャラ(GM全記録)

11840文字+有料  ミホと入れ替わりで店内に入るとディシャップではヤマさんが取り皿に黄色い粘土のようなものを練っていた。 「それはなんですか? 」  男はメモ帳を開いて訊(たず)ねる。 「マスタードだよ」とヤマさんは言う。 「和からしですね」男はメモ帳に記した。■十時五十分。和芥子練り。と男は記した。 「これは決まった時刻はないよ。手が空いたときでいいんよ」  ピッチャーの置きかたはヤマさんが教えてくれた。もち手の上部に◉印があるのとないのがある。 「それ

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男の性格(メモ癖)を道具で使う(GM全記録)

8320文字+有料  そろそろ立ち上げ準備のはずだ。  十時二十五分。男は、メモ帳に記した。 「どうだい? やっぱり良いじゃないか」  勝手口の敷居に仁王立ちをして腕を組んでオクサンは立っていた。 「先ずは、ぼくはなにをやればよろしいですか? 」 「最初は誰だって何もできやしないんだから、見てればいいんだよ」  まわりが一瞬、黙った。男は、パニックになりそうになって、咳きこむ。 「アキさん。マスクね。そこにあるよ」  ヤマさんは言った。  男は氷水のピッチ

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初日、さまざまなキャラの登場(GH全記録)

10979文字+有料  なぜそれらをメモしたのか。男にもわからなかった。バイトの初出勤で緊張して、目に映るものすべてを覚えようとしたのか。  自分はADHD(注意欠陥・多動性障がい)ではないか? 男は以前からそれを疑っていた。好きな小説やゲームはいくら時間を費やしても集中はできる。だが好きなこと以外に取り組むときや緊張をしたりすると、いろいろなわき見や独自の思考浮遊やとっぴな判断などの衝動が、脳から、とびでる。煙から蚤がぴょんぴょんとはねる。それらは身体にめぐって  数

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小説『ゴッド・マザー』全取材ノートvol.3。20230326sun272(ラストシーン第二稿)

5233文字・180min 喜ちゃん飯店の裏手、乾燥機の前。 アナタのそういう所が嫌いなんですね。オザワさんね、やっぱり、やっぱりオザワさんも大人だからわかるよねえ? あたしがなにか言ったら、働かせてもらってるんだから、経営者のやっぱり、あの、教え、教えてもらってるんだからそれを、やっぱり、素直に聞かなくちゃいけないんじゃないかなってかなって、思ったんですよ。でそういうアレがオザワさん一節(いっせつ)もなかったんです。あたしがなにか言うと、『どうしたなにかあるん?』 って

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