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舞台恐怖症

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開演まであとわずかだが、
ダンサーたちはお喋りをやめない。
司会者はまだチケットの手売りをし、
バンドは錆びたトロンボーンを鳴らす。
彼女は最高のシンガー、
この場末のバーレスクの。
客は彼女のパフォーマンスに興奮し、
メガネやパンツを白く濁らせた。

狭い楽屋では、
チンピラが金を巻き上げ、
パンチを1発置き土産に、
芸人にピエロの目をプレゼントする。

今夜も音楽とともにショウが始まるーー
世界の片隅のバーレスクと、
きらびやかな舞台恐怖症との間で。


愛に興味のない粗暴な色男たちは、
彼女のラブソングを聴きもせず、
彼女が歌い終えた後も、
手袋のまま軽く拍手した程度。
彼女と相方がライオンとの、
命がけのコントをやるときだって、
彼はバーカウンターで若い女を捕まえ、
喋れるだけ、自分の話をしていた。

額が汗ばみ、口も乾き、
頭をバカな考えがよぎるーー
しかし、彼女は自分の歌に立ち向かう、
それが正解だろうと、不正解だろうと。

彼女は長い間、成功を夢見てやってきたのだーー
世界の片隅のバーレスクと、
きらびやかな舞台恐怖症との間で。


スポットライトは彼方に浮かぶ星。
歌は心から落ちる涙。
舞台を怖がるシンガーにとって、
華やかなステージは真っ暗な監獄。
成功とは世界に隠された宝物。
報酬で人生を買い戻すことだってできる。
しかし姿のない美女がいないように、
失敗に似た成功はない。

君の声で彼女を抱きしめてやれ、
笑顔が彼女を満たすときまで。
「スキ」は心臓を貫く銃弾にも、
命を繋ぐ糸にもなりうるのだから。

今日も彼女は強い意志で堂々と歌うーー
世界の片隅のバーレスクと、
きらびやかな舞台恐怖症との間で。

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