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アシュカン

「汚物」がーー
ポリ袋に入れられ、
ゴミ収集車が来るのを、
ナイトホークスたちと待っている。
雨に濡れ、
ひどい悪臭を放っている。
前を通る通行人が、
ハンカチで口を覆う。

スーパードライの空き缶に、
使い切ったマックスファクター、
破かれたメモ、
そしてコンドーム。
それらをその「汚物」と一緒に捨て、
彼女はバスに飛び乗った、
男の軽い嘘が、
女の神経をナーバスにした時に。

 綺麗な言葉を並べたって、
 彼女の決意を変える事はできなかった。
 一度錆びてしまったティファニーの心は、
 二度と輝きを取り戻さない。

男は知る、
自分が一人にされたことを、
夢を見ている間に、
彼女が去ってしまったのを。
彼は辺りを見渡し、
先週捨てたユニクロの値札を見つける。
自分がいるのは寝室ではなく、
ゴミ箱の中だと気がついた。

お湯を沸かさないティファールの横に、
置かれた大きなポリ袋。
中からは泣き声が聞こえるが、
誰も気にとめない。
1台のゴミ収集車が
近づいて来る。
その時彼女はもう街の外ーー
愛とは残酷なショートコント。

 街中がゴミで溢れないのは、
 業者が回収しているから。
 恋人たちの心が陽気なのは、
 常に刺激を求めているから。

太陽の光が、窓から
コーヒーカップに落ちると、
街中の恋人たちが
気だるく起き上がる。
彼らは踊る、
街の至る所で、
ばら撒かれた種が
芽を出すように。

彼らは激しく嫉妬し、
冷たく裏切り、
古くなる前に、
常に新しくなる。
その「汚物」とは、かつて「愛」だった物、
ポリ袋に入れられ、
ゴミ収集車が運んでいくのを、
ナイトホークスたちが見送っている。

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