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「大当たりだったさ」

わたしのちいさなお店にも、
ありがたいことに常連さんがいます。

そのうちのおひとりは
わたしがこどもの頃習っていた
そろばんの先生のご主人です。
数年前に先生は亡くなりましが、
先生亡き後も
おとうさん(先生のご主人)は
たぶんわたしを見守って応援してくださっているのだと思う。
自炊もできる方なのに、
毎回来てくださるのです。
しかもいつも
わたしの手が空く時間帯を選んで。

先生がお元気なときは
こどもたちを連れてよくお宅に遊びに行きました。
そして
お父さんの剥いてくれた果物をたらふくいただき
お昼になると出前までとっていただきました。
こどもたちも
そろばんのおばあちゃんと
おじいちゃんが大好きでした。
こどもたちにふきの筋とりまで教えてくださったおふたり。
こどもたちをよく見て、
素敵なところをたくさん褒めてくださいました。

あははおほほと
いつも笑っている先生と
いつもニコニコ笑顔のおとうさん。
ほんとに素敵なご夫婦だった。

ある時なにかの話題で夫婦の話になって、
珈琲を飲んでいたおとうさんに言ったんです。
「おとうさんは、結婚大当たりだったね」
そしたらね、
おとうさん こう言ったの。
「ああ、大当たりだったさ」


ああ、なんて素敵なんだろう!

あの日のことを思い出すと
いまでも心がほかほかして、
うれしくなって誰かに言いたくなる。

わたしは
こういう喜びが大きすぎて、
だからお店を始めてよかったなって思います。

心と心がふれあう瞬間の
そこでしか味わえない歓び。
いつでもそれが
わたしの原動力なのです。



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