【書評】心に効く目薬 - 『Kの昇天』(梶井基次郎)
心の底から湧き上がっている感情は、言葉に出来ないのかもしれない。そう思ったことが何度もあります。
例えば、好きな人に想いを伝えるとき。その人の好きな部分は幾つでもあるはずなのに、いざ言葉にしようとすると口が縫い付けられたように開かなくなってしまう。どの引き出しを開けても、道具箱をひっくり返しても、思いにジャストフィットする単語がどうも見当たらない。相手は「え、好きなとこないの?ボコすよ?」という瞳を向けてくるので、焦ってしまってさらに言葉が出てこなくなる……。
上記は一例