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いろんな家族、いろんな価値観。みんな違ってみんないい。-『それでも、母になる』(徳瑠里香)

大学からの親友が本を出した。
彼女とは大学4年の最後、一緒にバックパックを背負って旅をした。毎日一緒に知らない町を歩いて、同じものを食べて、壮大な景色を見て、街角の生活に触れた。

人との距離の取り方がうまくて、懐にひょいっと入っていく。
時々ずるいくらいに可愛くって、運を引き寄せる力が強い。
努力家で、時にまっすぐわき目もふらずに突き進む。
感受性が豊かで、本が大好きで、家族が大好き。
そんな彼女をこの10年以上見てきて、いつか本を出すんだろうなと漠然と思っていた。

彼女に生理がないのは知っていた。子どもを産めないかもしれないとも言っていた。20代前半の頃、彼女はそこまで深刻そうにその話をしなかったし、私もそこまで突っ込んで聞くことはなかった。

そんな彼女が結婚すると決まった夫との出会いのエピソードも笑い転げながら聞いたし、不妊治療をはじめようと病院に行ったその日に妊娠が発覚した話も、彼女は面白おかしく聞かせてくれた。

そんな彼女が、若くして母になった友人や、里親や養子縁組、性転換をして父になった人、夫と腎臓を分け合う人のエピソードをまとめた本を出した。

家族が大好きで、まっすぐに人と向き合える瑠里香だから書ける本だと思った。
一人ひとりの物語にすっと入ることができて、いろんな気持ちを一緒に味わいながら、時に涙を流して最後まで一気に読んだ。

家族に一つの答えはないし正解もない。

5人兄弟と両親、祖父母の大家族で育ってきた私も、当たり前のように20代後半くらいには結婚して子どもは3人くらいいて、兄弟にも子どもが生まれて、正月盆には親戚が大勢集まるんだろう、と漠然と思っていた。

そんな私は32歳を前に、東京で一人暮らしをしている。長期休みのたび実家に帰る。
妙齢の同級生たちで集まると、独身もいれば既婚もいるし、夫婦2人で仲良くしている友人もいれば子育てに悩んでいる友人もいる。いろんな生き方があっていろんな考え方があっていい。そんなのわかってる。
それでも結婚もせずにいる自分はどこか「不完全」だと思わせるような古くさいしがらみの中にいることもいれば、日々試行錯誤しながらも仕事に邁進する自分を愛おしく思うこともある。

そんな私も含めて、いろんな人を、いろんな家族を、あたたかく抱きしめてくれるような。
一つ一つのエピソードを読みながら、なんだか自分も含めて許されたような気持ちになった。

と書きながら、「許される」という表現が出てきたことに、今の自分はなんだか社会に許されていないんだろうなと感じていることに気がついた。

瑠里香もあとがきで言っている。

 この本に書いたことは、現時点の私の視点や思いであって、きっとこれから出会いと思考を重ねる度に更新されていくと思う。まだまだ未熟で、矛盾もはらんでいて、「答え」にはたどり着きそうにない。この本に書いた私、そして彼女たちの人生も家族のかたちも、ずっと現在進行形で、変わっていくのだろう。

私も思うことは変わっていくし、いつどこで出会う誰かとどうなるかはわからない。だからこそ私も、「優しさ」と「想像力」をもって生きていきたいなと思う。

ぜひ多くの人に手に取ってほしい。
気になる方は、ぜひ「はじめに」を読んでみてください。


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