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負社員

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記事一覧

負社員 第83話 負社員惑いて星に立つ(了)

「なんなんすかねえ、あのおっさん」結城が建物に向かって歩きながら口を尖らせる。「本原ちゃ…

負社員 第82話 踏んだり蹴ったりうんざりがっかり

 ブナの木肌に、朝日の紅が色をつける。あたかもその皮の下に、血潮が流れているかのように、…

負社員 第81話 我々に教育担当を選ぶ権利はありますか

「地球との対話」大山は苦いものを噛み締めるような声で説明した。「それと、我々の依代はじめ…

負社員 第80話 この宇宙が滅び去るその時まで対話を

 縦二つに割られた青白い蛇は、それを形作る煙の粒子が一粒ずつ拡散していくように薄くなり、…

負社員 第79話 はっきり言わないとわからないしはっきり言うと配慮に欠ける事になる…

「うー」結城は再度、かすれた声で呻いた。 「結城さん」天津が叫ぶように呼び、 「結城君気づ…

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負社員 第78話 結論そこすか

「カマビスしい」そんな声が、聞えた。 「え?」結城は声のした方を見ようとした。しかしその…

負社員 第77話 対応方法不明の場合は穏便にいなして次へ行きましょう

「あ、やば」 「ス、スサ」 「おい、落ち着け」神たちは息を呑んだ。 「なんだ?」古参者は訝しげな声で呟いた。  地球は、黙って様子を見ていた。  ごり ごりり ごり ごり  何か、硬質のものが強い力で擦り合わされるような音が響いた。 「何だ? 何してる、スサ」 「おいスサ、やめろ」 「皆さん」伊勢が冷静に皆を制する。「今は、呼びかけないで欲しいす」 「え」 「あ、ああ……」 「うん」神たちは大人しく従った。 「すいません」伊勢は静かに謝った。「なんか高まってきてるす、あい

負社員 第76話 思った事を何でも話す行動ほどエネルギーを大量消費するものはない

「話の続きだけど」地球は新参者への問いかけを再開した。「何故……どうして神は、木を依代に…

負社員 第75話 ワンオペもツカれるまではキラクだが

「スサ」伊勢は、依代の身においては磯田社長はじめクライアントの社員たちと笑顔で労いや状況…

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負社員 第74話 転がる岩のように使途不明

 ごろごろごろごろ  ごろんごろんごろんごろん 「これは何の音でしょうか」本原が質問する…

負社員 第73話 スゲー・ヤバイ等は使用せず色・形・大きさ等の物理量で報告しましょ…

「スサ」伊勢は叫んだ。「起きたか」 「あー」寝ぼけたような声が答える。「ヨリシロ、ダメん…

負社員 第72話 職業:がんばってる弱者

「結城」泡(あぶく)のような声が名を呼びかける。「結城お前」「大丈夫なのか」 「俺?」結…

負社員 第71話 それだけ嬉しげに繰返す新造語も明日にはきっと忘れてる

成長した木片は、結城の手により孔の中へ差し込まれた。 「では始めよう」時中が眼鏡を指で押…

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負社員 第70話 いつ・どこで・誰が・何を・何故・どのようにも程がある

「ふぃー」鯰は甲高い一声を挙げた。「煮魚になるとこだった」 「鯰?」結城が叫び、 「鯰さま」本原が口を抑え、 「啓太」時中が茫然と呼んだ。 「啓太? 誰それ」鯰は訊いた。 「トキ君、啓太君じゃないよこれ、鯰だよ。魚類の」結城が足下の地盤に突如開いた孔から顔を出している鯰を指差し、時中に教える。 「わかっている」時中は嫌悪と憎悪が入り混じったような顔で唾棄するがごとくに言い捨てた。 「鯰さまはどこからいらしたのですか」本原が質問する。 「会社会社」鯰は口早に答える。「神たちも一