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魔法野菜キャビッチ3 キャビッチと伝説の魔女

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ポピーは魔法の世界に住む少女。その世界では「キャビッチ」という、神から与えられた野菜で魔法を使う――「食べる」「投げる」「煮る」「融合」など。 13歳になったポピーは、新たに「シ…
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2020年2月の記事一覧

魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 61

 アポピス類の三人は、人間と見た目は変わらないから、昼日中でも堂々と歩いて通りキューナン通りを抜け、聖堂の門をめざした。

 問題はユエホワで、いくら姿形は人間と同じでも、緑色の髪と赤い目、金色の爪で、ひと目で鬼魔だとわかってしまう。

 なのでこんな明るい日中には通りを歩けない。

「だからってなんであたしとならんで飛ぶの?」私は眉をひそめ箒にまたがりながらきいた。

「おばあさまのいいつけだろ

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 60

「地母神界、というのだそうよ」祖母は、肩越しに私たちをふり向いて話した。「アポピス類たちがつくろうとしているのは、国ではなく、菜園界や泡粒界、それに鬼魔界とならぶ、世界そのものだと」

「ええっ」

「世界?」

「なんといいますことでございましょう」

「すげえな」私たちはびっくりして叫んだ。

「そう、そしてその世界に、ユエホワを連れて行きたいと、そういっていたわ」

「俺を――」ユエホワが眉

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 59

 私たちは、畑から十メートルぐらいはなれたところに立つミイノモイオレンジの木の陰から、そっとのぞいた。

 月明かりが畑を照らしている。

 祖母は畑のはしっこに、私たちに背を向ける位置で立ち、右手に一個キャビッチを持って、斜め上を見上げていた。

 見上げている先には、祖母の言っていたとおり五人の人が――いや、人の形をした鬼魔が、空中に浮かんでいた。

 全員、マントを身につけている。

 アポ

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 58

「来たわ」ハピアンフェルが告げた。「アポピス類よ」

 私たちははっと窓の方を見た。

 なにかが光っているわけではない。

「四匹……いえ、五匹はいるわね」祖母が唇にひとさしゆびを当てて気配をさぐる。「畑の上空まで来た」

「姿は、消してるの?」私は祖母にきいた。

「わからないわ……でもおそらくはそうでしょうね。まずはピトゥイをかけておきましょう」祖母はそう言い、右手をひらいて肩の上にまで持ち

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