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魔法野菜キャビッチ3 キャビッチと伝説の魔女

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ポピーは魔法の世界に住む少女。その世界では「キャビッチ」という、神から与えられた野菜で魔法を使う――「食べる」「投げる」「煮る」「融合」など。 13歳になったポピーは、新たに「シ…
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2020年1月の記事一覧

魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 57

 そして夜になった。

 祖母は、いつもと同じように過していればいい、といったけれど、やっぱり皆そうもいかなくて――私もふくめて――なんとなく、リビングから出て行けずにいた。

 ソファにすわる者、床の上に直接すわる者、窓辺にたたずむ者、皆それぞれに、不安そうな顔でだまりこくっている中、祖母はとくに不安げでもなく、刺繍をしていた――そう、私と母の服の刺繍だ。

「美しいでございますですね」祖母の手

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 56

 ディナーのとき、祖母は「でも、まさか本当に四日以内に呪いが解けるとは思ってなかったわ。ほほほほ」と、楽しそうに笑っていった。

「えっ」私はミートパイをほおばるところを止めた。「じゃあ、何日で解けると思ってたの?」

「うーん。それはまったくわからない」祖母は首をふった。「そうとしか思っていなかったわ」

「あの」ケイマンがおずおずとたずねた。「もし、ほんとうに四日で解けなかったら、ぼくたちはほ

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 55

 ハピアンフェルは、しばらく何も言わなかった。

 私もそれ以上のことは言えずにいた。

「そうかも知れないわね」やがてハピアンフェルが、小さな声で言った。

 私はハピアンフェルをちらりと見た。

「けれど、たいがいの大人は――そうね、何十年も前には、いまのあなたと同じような、つらくて苦しい思いを抱えていたのよ」

「――」私は顔を上げて、ハピアンフェルをちゃんと見た。

「大人は年をとるにつれ

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 54

「まあ、なんて美しいのかしら」祖母は、私がヨンベの家から持ち帰った魔法薬の小瓶に目を奪われたようで、ため息まじりにそういった。「いいものをいただいたわね」

「これをキャビッチに?」ケイマンがきく。

「すばらしい」サイリュウもため息まじりにいいつつ、首をふる。

「シルクイザシか……見たことない植物だな」ルーロは材料の方に興味があるようすだった。

「本当にきれいなお薬ね。さっそく使ってみるの?

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