マガジンのカバー画像

魔法野菜キャビッチ3 キャビッチと伝説の魔女

86
ポピーは魔法の世界に住む少女。その世界では「キャビッチ」という、神から与えられた野菜で魔法を使う――「食べる」「投げる」「煮る」「融合」など。 13歳になったポピーは、新たに「シ…
運営しているクリエイター

2019年11月の記事一覧

魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 48

「ではそなたたちの名を申せ」私たちの話を聞いたあと、祭司さまはひとこと目にそういった。

 緊張した面持ちで祭司さまの前に立っていた三人のアポピス類のだれも、すぐに答えなかった。

 その理由は、私にもすぐに察しがついた。

 たぶん名前をいったら、つぎに祭司さまがおっしゃるのはこうだろう。「ではそなたたちに、名前を呼ばれると快楽をおぼえる“諾(だく)の呪”をかけるとしよう」

「こちらから、ケイ

もっとみる

魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 47

「よし、じゃあ早朝練習はこれぐらいにして、ばあさんとこで朝飯ごちそうになろうぜ」緑髪はひきつづきえらそうに、全員に指図した。

 私たちはぞろぞろと、森を出た。

 歩きながらもアポピス類の人たちは、私にキャビッチスローについてあれこれ質問してきたり、逆に私の知らなかった新しい情報を教えてくれたりして、私もだんだんこの人たちの話に興味を持ちはじめた。

 やがて祖母の丸太の家が見えてきた。

「ほ

もっとみる

魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 46

 次の日の朝、学校に行かなくてよくなった私は、祖母のキャビッチ畑でキャビッチを五個ほど選び、森の中へ入っていった。

 きのうビューリイ類鬼魔に出くわした、タルパオの大木が見えるところまで行く。

 その木に向け、まずは肩慣らしでストレートを投げる。

 どん、と重い音がして、タルパオの幹の、ねらったとおりのところが緑色に変わる。

 この、木に当たるときの音が、むかしにくらべると(というと私の母

もっとみる

魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 45

「え」私はそのひと言しかいえなかった。

「まあ、笑顔もすてきだわ」祖母がほめそやす。

「え」私は祖母に対してもやっぱりそのひと言しかいえなかった。

「会えてうれしいわ、ユエホワソイティ」ハピアンフェルもよろこびをつたえる。

「うふふ」ユエホワは笑い声をあげたがすぐに「やめろ」と笑顔のままいって「うふふ」とまた笑った。

「うわ」私はおどろいたけれどすぐに理解した。ようするにユエホワは今、こ

もっとみる

魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 44

「じゃあ、前に俺がかけられた纏(てん)の呪の、体が動かなくなるっていうのは」ユエホワが思い出しながらたずねる。「俺が、自分で……?」

「さよう」祭司さまはうなずいた。「お前はあのあと、ポピーに危害を加えようとしたのかね?」

「う」ユエホワは声をつまらせた。ちらり、と祖母の方を見る。たぶん、しまったよけいなことをいっちまった、とか思っていたんだろう。「いや、してない。なあ、してないよな」つぎに私

もっとみる