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魔法野菜キャビッチ3 キャビッチと伝説の魔女

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ポピーは魔法の世界に住む少女。その世界では「キャビッチ」という、神から与えられた野菜で魔法を使う――「食べる」「投げる」「煮る」「融合」など。 13歳になったポピーは、新たに「シ…
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2019年6月の記事一覧

魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 26

「パパはさ」私はわりと大急ぎめで話を変えた。「このマハドゥって魔法、何歳のときに使えるようになったの?」父にきく。

「それがさ」父は、まるでその質問をされることを心待ちにしていたかのように顔をぱっとかがやかせ、人さし指を立ててウインクした。「ちょうど、ユエ」けれどそこまで言ったとき父は、はっと大きく息をのんで自分の口を手でおさえたのだ。

「え?」私はびっくりして目を丸くした。

「ええとね、十

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 25

 マハドゥ。

 その魔法の起源は古く、神がこの世にキャビッチという不思議な力を持つ野菜をお作りになり、それを人の手にゆだねたとき、最初に人びとにお授けになった魔法のひとつとされている。

 けれどその魔法を使える者はけっして多くはない。

 なぜなら、神はその魔法を行使するさいに唱えるべき呪文に、ある特別な“条件”をつけ加えたからだ。

 その条件とは――

「無理だよ」私は空気を求めて青空にぐ

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 24

「じゃあまず、心をとぎすませて、頭の中に魔法陣を思い描いてください」父がつづけてみんなに指示をした。

 みんなは言われたとおりにし始め――私も――、全員目をとじた。

「その魔法陣の中に、今手にしている二つのキャビッチをかざすつもりで、両手を前に差しのべて」父がゆっくりと、静かな声で、次の指示をする。

 みんなは言われたとおりにした。全員目をとじたままだ。

「では、呪文を唱えます」父は静かに

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 23

 学校へ着くと、みんな建物の中には入らないで、庭で待つように、と先生たちに言われた。

 少しおどろいたけれどすぐに、妖精のことかな、と気づいた。

 聖堂から、もう学校へも、たぶんツィックル便かなにかで伝えられたのだろう。

 でも、はたして学校の先生たちは、妖精のことをよく知ってるんだろうか?

 私の父も母も見たことがないというし、ルドルフ祭司さまも、もう何十年もの間妖精は姿を見せていないと

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