2人の経営者へ捧ぐ②
夫よ
繊細でお育ちが良く、ナルシストなあなた
100人いた新入社員の研修で、割り振られたチームの担当のあなたと新入の私との出会いが、私たちの運命的な出会いなんて、その時は思いもしなかったね
生意気な私に手こずったあなたと、その業界にいる男性に対して偏見を持っていた私が、お互い良い印象がある訳じゃ無かったのにね
部署違いで社内では殆ど会う事も無かったのに、3年後に付き合う事になるなんて、周りも自分たちでさえ誰も思わないよね
再会してあなたが独立している事を知って驚いたけれど、私は運命を感じた
私をわかってくれる人はこの人だ、あなたを支えられるのは私だ、って
だから独立したばかりで彼女を作る気の無かったあなたに、私の人生で初めて付き合う事を懇願したんだよ
2人で休み無く店舗に立っていても、楽しかった
ずっと一緒にいるだけで良かった
だって私たちには希望があったから
5年目になって結婚するきっかけも私が作ったけれど、あなたも納得してくれて嬉しかったんだよ
きっとあなたや私の両親のように、夫婦が思い合い協力し合う愛情溢れる家庭が作れるって期待した
なのに半年で10万人に1人と言われる病気にあなたが倒れて、お医者さまに「今夜が山です」ってドラマみたいな事を言われて本当に辛かった
病院の個室で一晩一緒にいて、泣いているのを悟られないようにするのは、まだ若い私には難しかったよ
そして結婚したからって、もっとしっかりして欲しいとか、理想の家庭像を作る事を強要した事を激しく後悔した
にも関わらず、大した後遺症もなく生還したあなたにが2年経っても会社の状況を改善しない事に不満で、あなたに不信感いっぱいで
私たちが目指している未来は、共通じゃないの?
私は人並みに生活して温かい家庭を作って子どもが欲しいのに、あなたは違うの?
私の辛い気持ちを思いやってくれないの?
って悲しくて辛くて
それから病気ばかりして、もう結婚生活を続けられないって言っても「別れない」って言ってくれたあなたを素直に受け入れられなかった
見栄や体裁ばかり気にしているんでしょ?
これまで尽くしてくれた女を手放したくないだけでしょ?
ってしか思えなくて
発見が遅れたら妊娠出来なかったかも知れない病気が見つかって不妊治療をする事に協力してくれたのに
精神を病んで動けない私を文句も言わず支えてくれたのに
こんな状況じゃ子どもを育てていけないって事業を辞めるようにあなたの親に言って辞めさせたのに
私を責める事も見捨てる事もしなかったのに
あなたの愛を信じる事が出来なかった
だって付き合うのも、結婚するのも、妊娠するのも、すべて私が望んで主導したから
あなたの優しさだけでやってくれているだけで、あなたの望みじゃないでしょ?って疑ったの
あなたの優しさは自己主張出来ない弱さだ、って疑ったの
だけどね、やっぱりやっちゃいけない事や、やらなきゃならない事ってあるんだよ
厳格な公務員のお父さんの下にアルバイトもした事がなく、危ないからって自転車も買ってもらえなかったような大切に育てられたあなたには難しいかも知れないけれど
一般社会で生活するにはお金が必要で、お金は自分が稼がなきゃ得られないんだよ
無いお金は使っちゃいけないんだよ
借りたら返さなきゃならないんだよ
信用を失う事はすごく怖い事なんだよ
いい人だからって、他人は許してくれないんだよ
人を愛するのは自己完結だけじゃダメなんだよ
世の中はあなたみたいに純粋でいるだけじゃ成り立たないんだよ
戦略や策略を練って、対策して結果を導き出す事に努力しなきゃいけないんだよ
ワールドブランドの規範店で憧れの店長だったあなた
そこら辺のプロよりギターが上手なあなた
自分がやろうと思えば、やった事がない事もコツコツ努力して習得出来るあなた
繊細で素直で優しくカッコいいあなた
きっと人がいなきゃ成り立たない事業じゃ無ければ、自分の才能を活かせたよ
8歳も年下の気が強くてわがままな私に執着しなければ、あなたを支えてくれて居心地のいい素敵な女性なんていくらでもいたよ
先天性の心臓疾患が発見されていたし、お医者さまから手術を勧められていたんだから
やりたい事をするため、生きるために手術してよ
やっとあなたの優しさが弱さじゃなく
私にはあなたしか居ない
あなたとの未来を手放したくないって認められたのに
突然この世からいなくなるって、酷いよ
子どもにだって愛情持ってくれたじゃない
これから2人で今までのいろいろを笑い話に出来るはずだったと思うよ
お互いに認め合って、また付き合った当時のままごとのような幸せな日々を取り戻せたと思うよ
でもね、こうなったのは私の責任だね
自分の本心を偽り、あなたの愛情を疑い、未熟だから招いたんだよね
あなたが私にとってどんなに大切で、頼ってたか
感謝しなかったから罰を与えられたんだね
あなたは被害者だよね
本当にごめんね
そして、こんな私を愛してくれてありがとう
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