見出し画像

AI技術のスポーツカー(J.Iくん)

この記事は2019年4月28日にホームページにて掲載したものです。

「せんせい、いい車を考えた。」
「どんな車だ?」
「AI技術でスピードがどんどんあがる。」

この日のJくんは、よくAIという言葉を口にした。
なにやら、よほど関心があるらしい。
「今は、人間よりAIのほうがすごい」なんてことも言っていた。実業家みたいなことを言うもんだ。そしてなかなか、それについての知識もある。

お気に入りのサインペンで、じっくりと赤い車を描き上げると、続けてこう話し出した。

「この世で1ばん速い。だれよりも速い。AI技術でつくられてるから。」

さて、それを聞いた僕は、少しいじわるを言ってみたくなった。
「それじゃあ。それに悪い人が乗ったらどうするんか。どろぼうが乗ったら誰も捕まえられなくなるぞ。」

僕は、それはパトカーが捕まえる、とか答えるんだろうと思っていた。そして「なんだ、それじゃあその赤い車は世界で1ばんの速さじゃないやん」と僕が言う。ふふふ。


けれどJくんは、まるで用意していたかのように、すぐにこう答えたのだ。

「今まで、悪いことしたり、お酒を飲んでる人は、運転できないしくみ。AI技術で。」


うーむ、なるほど。理にかなっている。そしてAIをよく理解している。
ドライバーの今までの違反経歴などのデータを照合し、AIが判断してエンジンがかからない仕組みなわけだ。飲酒運転なんて、もっての他だろう。ドライバーのアルコール検査をすればすぐに分かる。うーん、いい考えだ。


「それじゃあ、」と負けず嫌いな大人の質問が続く。

「それじゃあ、今まで一度も悪いことをしてない人が、どろぼうをしたらどうするんか。データがないなら、いくらAIでも、わからないだろう。」

僕は得意気だ。大人げない。

するとJくんは、じっと考えた。
じっと考えたあとで、こう言ったのだった。


「うーん、それは、占い師がきめる」

…さっきまで最新テクノロジーを
語っていた科学の子が急に、占いだなんて…。笑


その、独特なバランス感覚に、
僕は心から、「まいった」と言いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?