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隙間風

   隙間風


工学部のある大学の前の道で、
植木鉢を持って歩いていた人に僕は、

「この辺りで、
桜が綺麗に見える所はありますか」

と尋ねると、その人は、
「よく知っている」

と僕は教えて頂いた通り進みながら、
雪玉をいくつも作ってへたを付け、

蜜柑にしながら、
この町に来るまで、

ぐずぐずしていたことを
思い出していました。

日陰で少し立ち止まると、
お蕎麦屋さんでは、野球道具を置いて、

「昨晩は飲み過ぎたあ」と白湯を飲み、
もりそばを注文すると座敷で横になり、

「ああもう楽しかったなあ」
と言いました。

僕がまた歩き出すとき、
誰かがおそばをすすると、

むせび泣いているように聞こえました。
僕は少し早歩きになりながら、

障子の隙間風を
指で押さえるようにいつか

「不安なことなんて、もう何一つない」
なんて言ってみたいと思いました。


良い文章を作れるように、 作るために、 大切に使わせて頂きたいと思います。