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はちみつ

   はちみつ


昔も今もはちみつと言えば高価なもので、
お中元やお歳暮で届いたと聞けば、

その友人に、本屋さんや切符売り場で、
会ったりしないかなと思ったりした。

実家の近くに養蜂場がある友人が、
坂を上がって来ました。

僕は居住まいを正し声音を調整し、
「ごはんは食べて来たのか」

と裾を擦らぬように、
袴を持って歩く姿に声を掛けました。

縞模様の外套が、
蜜蜂に見える

そのようなことはありませんでしたが、
彼に残る路面電車の車内の香りは、

売れない詩人の僕にとっては、
うらやましく思った。

友人は、
「時間はあるかい」と聞く。

「うん」
「じゃあ待ってて」

と言い友人は部屋に帰り、
箱を持って出て来て、

「甘いものだ」と言って、
僕に一瓶はちみつを譲った。

「君は僕に恩があるのかい」と聞くと、
「夕方私を、待ち侘びてくれている」

と言いました。僕は正直に、
「実家からはちみつが、

届く頃じゃないかなと思っていたんだ」
と言うと、

「それを詩にするんだよ」
と友人は言う。

「ありがとう」と僕は頭を下げた。


良い文章を作れるように、 作るために、 大切に使わせて頂きたいと思います。