見出し画像

第17話 子どもを想うならば

珍しくホワイトな内容なので、表にアップします。


セフレが欲しいマガジンより。(今回はちょっとだけ真面目な話です)


第17話 子どもを想うならば

 奥様と離婚して、子ども2人を引き取ったパパさんに出会った。待ち受けは可愛い子どもの写真で、会うたびに見せてくれた。まではいい。

 恒例の何故出会い系サイトに来たか?の質問だ。返事は決まって、「子どもの為に、子どもが好きな母親が欲しい」と言われた。しかし、私は子ども好きだが、別に新たな子どもを作る感じでもないし、寧ろ、子どもが小学生以上であれば「これから新しいお母さんが来るよ!」と言った所で正直受け入れて貰えないと思った。
 実際に私はその人の子どもにもあってないし、父子家庭でも幸せに育つ子どものエピソードを聞いている限り、彼に出会い系という場所は必要ないのでは?と思った。
 でも違う。彼が求めていたのは、茶飲み友達だ。育児ストレスもあるのだろう。私は子どもを作れない人間なので分からないが、ただ話を聞いてニコニコするだけは出来る。
 家庭の用事で20分遅れて待ち合わせにきた彼と、行きたかったユニクロの新作を物色したり、カフェでお茶して、子どものお迎えがあるからと夕方には解散した。

 何が楽しかったのか分からないが、彼から楽しかったからまた会いたい!と連絡が来た。正直、それは私の求める分野ではないし、「子ども」がいるので彼をあまり連れ歩く気分ではない。かと言って部外者の私が何か発信するわけにもいかず、ただ2回目も話を聞いて終わるだけ。
 流石に3回目は無いだろうと思ったら3回目も連絡が来た。別に害がある人ではないし、一緒にカフェ行って解散なので実に健全だ。しかし3回目になって、12歳の女の子の写真を見せられた。

「うちの子なんだ。可愛いでしょう?」

 でれっと笑う彼は物凄く幸せそうだった。こんなにも笑顔の可愛い娘さんと、わんぱくな息子さんがいて、何を求めるのか。やはり欲しいのは『母親』だったらしい。

「今度さ、うちの子も連れてきていい?」と言われて正直困った。私の年齢で12歳の子ども?24歳で産んだ計算になるからまあいいのか。
 そう勝手に解釈したものの、子どもとうまく距離感が掴めないのに、(姪っ子には嫌われている)思春期真っ盛りの子に会って、パパを取らないで!とかドラマのような修羅場になっても困る。
 どうでもいい話だが、この時に自分の思春期時代を思い出した。あまりにも黒歴史過ぎてちょっと頭を抱える。

「……いや、お子さんにとってわたしの存在は微妙ですよ。いつも通り夕方には下の子のお迎えあるでしょうし、お帰りになった方がいいかと……」
「でも、僕だけの愛情で、この子達が不幸になるかもしれないと思うと辛いんだ。ちぃちゃんならわかってくれると思う。だから、実際にうちの子にあって欲しいんだ」

 まるで土下座でもしそうな勢いで両手で手を掴まれてそれこそ「懇願」された。生きるのを必死に頑張っているパパさんに、こんな姿をさせるのは申し訳ないと思いつつ、その場は今度機会があれば、と濁して終わった。

 そこまでは良かった。彼とはここで終わるべきだった。それからもいつ空いているか?との連絡が相次ぎ、元々セフレを求めていた私は彼ではなく、別の人を探していた。お付き合いはしなかったが茶飲み友達で予定を埋める中で、子連れの彼の育児体験を共有してくれ、と押してくるのは正直きつかった。そもそも、私はまだ彼に“恋愛感情“なんてものはない。

 いくら身辺的にフリーだとしても、そこにすぐ食いつくことが得策ではない。むしろ、子どもがいるからこそ、慎重に行くべきだし、私は彼との関係は『友達』としっかり割り切り、お互いにお互いのお金を払っていた。流されて大人の余裕から奢られるのは嫌だからだ。

 もしかしたら、そこが彼にとって刺さったのかもしれない。世の中の女子は「奢ってくれるんですかあ♡ありがとうございますぅ🎵」が当たり前らしい。私は見ての通りそんなキャラじゃないので、男性に奢られて喜ぶことはなかった。

 LINEの通知はいつも彼からのものが多かった。しかも必ず「おはよう!」と朝の挨拶から始まり、その後は赤裸々に子どもの話が続く。
 いや、私の子どもじゃないのに、そういうの聞かされても……と思うと同時に、寧ろどう返事するのが正解なのか分からなくて悩んだ。この後に実際また胃炎を悪くして暫く胃腸薬の世話になっている。
 事実だったのだが、「胃の調子が悪いので暫くサイトも誰かと会うのもおやすみします」と返事し、お大事に、と言われたのでそれで暫く安寧を得たと思った。

 それも違ったんだ。まさかの、翌日から同じLINEが続く。昨日、わたし、胃が痛いって言いましたよね?と思うがそこは特に突っ込まないで、いつも通り彼の話を聞いた。すると返ってきた返事はとんでもなかった。

『胃が痛いってのは嘘だったんですね。どうせそうやって僕のことも騙してお金せしめようとしていたんでしょう。あなたは最低の人です』

 はい?

 思わずLINEを読み返した。これは私に宛てたものか?それとも、誤爆?
 でもよく見ると胃の事も書いてあるし、やっぱり私に宛てたものだよな?

 半信半疑ながら、とりあえず返信する。

『わたしはあなたとの関係において金銭を要求したことはありませんし、割り勘のお友達ですよね?それに騙すってなんですか。被害者ぶるのはやめてもらえませんか?』

 こちらは何もしていないのに頭ごなしに言われるのは腹がたった。ついついLINEの文章も荒くなる。(こちらは猪突猛進イノシシ武者なので)

『ごめんなさい、間違えました。すいません。今のはちぃさんに向けたものではないんです。訂正してください。ごめんなさい』

 ないわー。(冷)

 ごめん、私は熱しやすくすさまじく冷めるのが早いB型水瓶座女子なんだわ。
 こちらが少しでも強く出るとすぐに矛を引っ込める。だったら、『他の男と楽しそうにやりとりしてるお前に嫉妬したんだ!俺を見ろ!』くらい言ってくれたらよかったのに、なんだよこの腐ったようなLINEは。

 その後全部既読スルーしていたら、またあっちが暴走した。

『僕のこと弄んで楽しかったですよね。あなたはやっぱり最低の人間です。騙される男達が情けないし、哀れだと思います』

 はい?

 流石に頭にきたけど、ブロックする前にブチ切れた。

『あなたは私の何を知っているのですか?会うたび会うたび子どもの自慢ばかりで、私の話を聞いたことありますか?私が話す時は心ここにあらずで、夕方のお迎えの為に私はわざわざ休日の時間を上野に来るまで割いて、交通費だってかかる、なのに得るものは楽しい時間ではなく、あなたのストレスの捌け口だ。そんなん欲しいなら出会い系じゃなくてちゃんと興信所に行けばいいんじゃないですか?』

 蒲田から上野までの往復と乗り換えははっきりいって三半規管の弱い私には地獄の時間だ。
 さらに反論が来るかと思いきや、チキンな彼は

『やっぱりあなたは最低です。時間を無駄にしました、さようなら!』

と、語彙力のカケラもない「最低、最低」だけを連呼して私をブロックした。

めでたくない、けどめでたしめでたし。

 頭にきた私は、安村(仮名・唯一続いている名古屋在住の変態友達)に愚痴った。
 すると、安村からは

『まあ、そいつがいなくなったことで、他に時間使えるようになったしいいんじゃない? 暇になったんなら、○○(私の本名)のオナニー画像送ってよ』

 やっぱり安村はブレない変態だ。でもこの一言に救われた。もちろんそんな画像は送らなかったが、自慢の乳だけ送りつけてやった。

『仕事中なんだけど、これどうしてくれる?』

 と怒られたけど、しらんがな。だって欲しい言ったから送った。ただそれだけ。
 そんな言葉遊びをしていたら、よくわからない最低野郎とのやり取りがどうでもよくなって心が晴れた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?