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観測籠球~得点効率の観点からデータを見てみよう20191024

得点効率という言葉

ここの所のバスケを語る際によく使われる言葉として、「得点効率」というものがあります。これは「期待値」とも言い換えられますが、簡単に言うと「1本あたりで期待できる得点が高いシュート」を得点効率の高いシュートとし、そういうシュートを少しでも増やしていくことを目指すチームが増えてきている、ということです。例えば、この考え方の最先端をいくNBAのヒューストン・ロケッツのある試合のショットチャートを見てみると、

シュートを表す印が3Pラインの外とペイントエリアの中に極端に偏っていることが一目瞭然です。ヒューストンは極端な例ではありますが、多かれ少なかれNBAはこのトレンドに支配されつつあるのが実情です。

翻って、日本のBリーグはどうでしょうか。先に書いたように少しずつ得点効率という言葉が浸透しつつありますが、その考え方を反映させたチームビルドをしているチームは出てきているのでしょうか。

Bリーグの得点効率を見てみよう

この得点効率を出すには、各々のシュートがコート上のどこから放たれたかが記録されていることが必要不可欠です。現状NBAほどの精度では記録されていませんが、下記の図のように、ペイントエリアの中をインサイドペイント(IP)、3Pラインの外を3P、ペイントエリアの外で3Pラインの中、図の斜線部分をアウトサイドペイント(OP)という分類はされています。

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昨季まではそれを集計するのはプレイバイプレイを見ての手計算しかなかったのですが、今季は、

バスケットボールナビさんがまずチームごとの集計を始めていただけたため、少なくともチームごとでの集計分析は容易になりました。(あとは個人別集計画面に反映していただければ…)そこで、HPのデータをもとに、B1B2別で、3P、IP、OP、全体のFG、FT、eFG、そして、3PとIPとOPの試投の比率を表にまとめました。

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あくまで平均値としての扱いですが、これより高いか低いか、というのはそのチームの実力及び方向性を見るのに役に立つのではないでしょうか。そして、平均値で見てもB1はB2よりも各FGの確率が高いのがわかります。強度が高いゲームを行いつつのこの数値の差に技術の違いを感じるのは私だけでしょうか。

ちなみに期待値という意味で行くと、現状のBリーグでは

IP (B1:1.14、B2:1.09) > 3P (B1:0.98、B2:0.98) > OP (B1:0.71、B2:0.67)

の順番で効率が良いということになります。もちろんポジション、人などで変わりますが、攻撃側はOPの比率を下げた方が、守備側はOPを打たせた方が効率が良い、ということはデータからも読み取れるところです。

B1/B2試投地点比率

さて、では現状、各チームがどのような比率でシュートを放っているのか。グラフ化してみたので見てみてください。

20191024FG比率B1

20191024FG比率B2

便宜上ここではOPの比率が低い順で並べています。ただ、これはあくまで「効率が悪いとされるOPの試投比率が低い順」というだけであり、チームとして確率の高い選手、タイミングで打てているのであれば、もっと高い期待値が出るはず。この表だけでは良し悪しは測れません。それでも、B1滋賀、B2信州、B2東京Zあたりは、得点効率の考え方を元に、かなり3Pの試投比率を増やしているのでは、というのは数字からも推測できます。

では、何かと組み合わせるともう少し分かりやすくなるはず、ということで、次はそれぞれの比率をそれぞれのFG%と組み合わせて、分布図を作ってみましょう。

アウトサイドペイント(OP比率×OPFG%)

アウトサイドペイントは効率が良くない、というところから入った話題ですので、まずはOPの効率性について見てみましょう。縦軸がOP比率で下に行くほど比率が高くなり、横軸はOPのFG%で右に行くほど確率が高くなるようにプロットしています。おおまかには、右上エリア→OPは比率が少ないが成功率は高い、右下エリア→OPの比率は多いが成功率も高い、左上エリア→OPは成功率が低く比率も少な目、左下エリア→OPの比率は多いが成功率が低い、という方向性が読み取れます。

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B1の表を見る限り、OP=ロング2Pが得点効率の良いと言えるのは成功率が40%を超える新潟、川崎、名古屋D、宇都宮、A東京あたりでしょう。逆に、確率があまり良くないわりに多くの試投比率が記録されている北海道、横浜、低確率のロング2を本数打たされている三遠と富山はかなり厳しい状況にあると言えるかもしれません。

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まず目が行くのは香川の確率の高さでしょう。これはウッドベリーのロング2が非常に確率が良く、明確に「一定以上の効率の見込める攻撃」に組み込まれている、ということのように思われます。熊本も同様で、これだけロング2が入るチームはなかなか放置はできません。また、信州、福島、愛媛はロング2は極力打たない、ということがかなり徹底されている印象の分布です。一方、奈良、仙台、群馬、山形あたりは比率のわりに効率が悪い状況です。

3P(3P比率×3PFG%)

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3Pについてはもともと得点の期待値が高めに出ることもあり、比率をかなり高めているチームが見受けられます。ただ、滋賀、新潟辺りはやや精度に乏しく、意図はあれども苦労しているところが見て取れます。逆にそもそも本数自体が少ないのが秋田、富山、横浜あたり。いずれも先ほど見たOPは比率が高めで、3Pを打てずにOPに追い込まれてるのかも、という風に見えるわけですが、実際のプレーはいかがでしょうか。

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広島の40%超えは強烈ですね、なB2の表ですが、やはり先ほどのOPで上の方にいたチームでこの表の下の方にいるチームは、意図的にOPを打たないように仕向けていると言えそうです。ちなみにFE名古屋と仙台は率は良いですが試投率は低くなっています。打てる時にしか打たないのは良いことなのかはよく分かりません。

インサイドペイント(IP比率×IPFG%)

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ペイント内のシュート比率と成功率。皆様お分かりだと思いますが、ペイント内のシュートは確率が高くなるため、出来る限り増やしたいのがそれぞれのチームの考え。どれだけ外のシュートが上手いチームでもリングにアタックできなければ効果は半減します。そういう意味で、滋賀のこのポジションは「中を攻められない故外に頼る」という図式なのかもしれません。それにしても三河のこの比率は、やはりダバンテ効果でしょう。同じようにジョシュアスミスの効果でここに居たであろう富山がこの後どのようにバスケの質を変えるのかも注目です。

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B2は東京EXがペイント内を殴りまくって成功を収めている状況。一方、比率の高いFE名古屋は他の上位に比べて決めきるという意味で苦労していることを思わせるポジションです。

B1とB2、似た状況のチーム?

最後に、独断と偏見で、この3つから見る似たようなチーム。

B1滋賀とB2東京Z(インサイドアタックに苦労していて、3Pに活路を見出そうとしつつ確率で苦労している)

B1三河とB1東京EX(効率のいいインサイドアタックで押しまくる)

他にもいろいろありそうですが、今日はここまで。皆様も、この表から見出せそうなことが他に見つかれば、教えていただけると嬉しいです。

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