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組織の腐敗、設置された目安箱、はたしてその目的は?

会社は新年度を迎え、毎年のことながら春の人事異動が行われた。
今回の人事異動では何人かのお偉いさんたちが定年になったこともあり、いくつかの役員ポジションでの交代もあったが、一般社員にとっては年が変わるときのカレンダーと同じで、どうせ変わるの表紙だけで中身は何も変わらないだろうと誰しもが思っていた。
しかし、年度はじまりの役員スピーチで思いもよらない話が出た。
目安箱の設置である。
通常、一般社員が役員に直訴することなどできはしない。
やろうと思えばメールでも手紙でもできるのだが、そんな直訴をしたところで取り上げられることはない。逆に組織に反抗する異端児として粛清されるのがオチである。
実際に社長に直訴したらしいエルダー社員は、その後、雇い止めになっている。建前上は法令に引っかかるような雇い止めではないようだが、雇い止めされたそのエルダー社員の全社員へ向けた最後の断末魔メールのことは今でも覚えている。会社の酷い対応や仕打ちについて書かれたメールである。事実であれば酷い内容であるが、同時に社員たちは思ったはずである。
会社に逆らってはダメだ。
会社に逆らえば容赦無く切られると刷り込まれたに違いない。たぶん、会社の問題を全社員に知ってもらいたいという目的よりも、エルダー社員の最後のメールは会社の怖さを全社員に印象付けることになったことだろう。
だから、直訴などする社員などいないのである。
そんな事情が過去にあったこともあり、今回の目安箱の設置には多くの社員が驚かされたことだろう。
目安箱と言ってもアナログなものではない。誰かに検閲されることなく当該役員に直接電子メールで届くので、誰がどのタイミングで何を言ったかは直訴した当人と、その役員しか知ることはできない。
もし、これが腐敗した組織を是正すべく行われたものであれば、腐敗した中間管理職たちは一掃されることになる。
だが、本当にそうなのだろうか?
これまでの会社の口先だけの「改革」という言葉に何度もがっかりさせられてきた私としては、嬉しくもあるが、やはり心のどこかで信じられないところがある。
最悪の場合、腐敗の是正どころか、組織体制に対して反感を持っている社員の炙り出しをするための施策かもしれない。もしそうだとすれば直訴した社員の方が一掃されてしまうことになる。
その役員の話だと、先行して話をした別の事業所からはすでに何通かの投書があったらしい。だから君たちも遠慮なく投書して欲しいということなのだが、それを信じて本当に投書をしてよいものなのか?
周りを見ると、これまでの鬱憤や不満を吐き出すチャンスとばかりにデスクに戻ったらすぐにでも書こうというようなことを小声で話している社員たちもいたことから、この事業所からも何通かの投書は出されることだろう。
そして、目安箱設置の真意もまた、すぐにわかることになるだろう。
本気で組織の腐敗を是正するための施策なのか?
組織に反感を持つ反乱分子の炙り出しなのか?
果たして粛清されるのはどちらか?
少なくとも数ヶ月後には結果が見えるはずだ。
これ以上残念な気持ちにさせられたくないが、白いブラック企業だけに期待を裏切らないような気もする。
また、この目安箱の顛末が分かり次第報告したいと思う。

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