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オーベルシュタインママも苦労するなあ……〜銀河英雄伝説 Die Neue These (14)感想

 なんだかんだ楽しいので続きを見ている。エルウィン・ヨーゼフ二世すんげえかわいいなあ。かわいいぞ。この子をどうにかしようとするやつなんてすごいひどいやつだ。

ラインハルトの新しい主君、エルウィン・ヨーゼフ2世。

幼友達というのも結構、有能な副将もよろしいでしょう……

「幼友達というのも結構、有能な副将もよろしいでしょう。しかし、その両者が同一人物だというのは危険です」

 皇帝が崩御し、次期皇帝をめぐる争いに身を乗り出し、無理くり幼帝のエルウィン・ヨーゼフ2世を即位させるというかなり危ない橋を渡っているのに、キルヒアイスを宇宙艦隊副司令官という要職に抜擢したラインハルトにオーベルシュタインが釘を刺す。

 ……お出かけ前のラインハルトのお着替え中に。

着替え中に説教されたら誰だってムカつくだろ〜

 オカンか。オカンなんだな
 これから意中の彼女とデートに行くために上着を着ている息子に「あんたねえ!前々から思ってたんだけど、今の彼女と付き合うのやめな……!!」と説教垂れる母親のようである。
 もちろんラインハルトは「うっせぇ!!出過ぎるな」とキレてしまう。
 時と場所をえらぼうパウル。

 とはいえ、オーベルシュタインの言いたいことはとてもよくわかる。ラインハルトがやっているのは、それこそラインハルトが軽蔑する門閥貴族と同じコネ採用に近い。
 実際のところキルヒアイスはいきなり階級を引きずり上げられて宇宙艦隊副司令官になっても楽しそうではない。非常に心配しているのだが、ラインハルトが焦土戦を行うと決めてからキルヒアイスの表情が「無」になっている。今までは「ポーカーフェイスでいなきゃ」という無表情だったのが、どこか他人事のような、「そういうこと言われても私よくわかりませんし」という無表情に変わっている気がする。
 よっぽど栄誉を横取りされたに等しいミッターマイヤーとかロイエンタールのほうが楽しそう。

 幼友達を信頼できる側近として置いたり、重責を担う有能な副将を持ったりするのはいい。だけれども幼友達に重責を担わせては、外聞もよろしくないし、その友人自身も苦労してしまう。——とオーベルシュタインは考えているようなのだが、はっきりそこを突くことができない。オーベルシュタイン自身、ラインハルトとキルヒアイスの関係を「ただの親友だろう」という程度で完全に理解できていないのだろうし、意志を相手に伝えるのが下手くそそう。 

姉ちゃんと思いが違うかもしれない

 今回はなんとなくキルヒアイスの無表情とともに気になったのが姉ちゃんのことだ。ラインハルトの足元がぐらついている予感がする。
 姉ちゃん、皇帝の葬儀に際して非常に悲しそうな顔をしている。……あれ?
 ラインハルトが「いや〜!これで俺は解放された……」という複雑な顔をしているのに比べて、素直に姉ちゃんは大事な人を失った悲しい顔をしている。……おや?
 物語の前提が崩れそうだぞ。

演技とは思えない顔だし、姉ちゃんに「演技」できるかというと……

 姉ちゃんは皇帝を愛情とはいかぬまでも敬慕していたのかもしれない。確かに姉ちゃんは宮廷生活そのものには苦労していたようだが、皇帝本人に苦労しているとは一言もほのめかせたことがない。地位が地位だし、ほのめかしたら失寵して弟に迷惑がかかるかもしれないが、不自然なほど、姉ちゃんは皇帝に苦労している描写が見受けられない。皇帝の介護をしている描写があったが、まるで穏やかな祖父と優しい孫娘のようであった。爺さんの色ボケめいた描写がない。
 だいたい、皇帝自身もガーデニングが好きで政治に興味がない程度、良い意味でも悪い意味でも凡庸な人物として描かれている。女好きであることを除けば、お隣の園芸好きじいちゃんみたいな印象だ。銀河帝国の抱える問題は、もはやじいちゃん皇帝一人の責任ではない段階になっているし、実際、じいちゃんがあがいたところでほとんど今と同じ結果だろう。政治に無関心ゆえに、暴走して朝令暮改を乱発していたずらに政局を混乱させないだけ、まだまともかもしれない。

 そんなじいちゃんの、ラインハルトがこの回の冒頭で言っていたような「犯した罪悪にふさわしい死に方」って、ガーデニング中に股間を蜂に刺されたとかではあるまいか。
 あともうちょっと皇帝が長生きしていたらローエングラム元帥府の皆さんはスズメバチを男性の股間を狙うよう調教し、皇帝のお世話している庭に放つ危険な作戦行動を行っていたかもしれない。それでは皇帝の死因である心臓発作とあんまり変わらない気がする。

 姉ちゃんは皇帝が死んだため後宮に残らず側室をやめ、ラインハルトに小さな家(クソデカパレス)を買ってもらった。

「姉上が、なるべく小さな屋敷がいいなどというから」……???

でも、側室をやっていた頃にラインハルトと会った時の、よく笑い冗談を言い弟を心配する姉ちゃんとは違い、非常に落ち着いてしまってどこか物悲しい印象がある。ずーっとにこにこしているラインハルトとは正反対だ。自分を束縛していた人から解放された感じはなく、弟と車中での会話はない。やはり皇帝の死は姉ちゃんの精神にとってかなり大きな出来事だったのだろうなあ、と思わせる。

 何はともあれ、ラインハルトの「目的(帝位簒奪)」のための「動機(姉が皇帝に奪われたので奪い返したい、皇帝に奪われたもの以上のものを皇帝から奪いたい)」が消えた。ラインハルトは動機がなく帝位簒奪を狙う愉快な人になってしまいつつある。今の状況から、「動機」を見つけることはできるんだろうか。

フレーゲル男爵(強キャラ)

怖い。
すごい怖い。
無茶苦茶怖い。

 スゲー強キャラが帝国にいるぞ!!!!! なんだこいつ!!! たのしい!!! えっなにこれ……
 同盟のフォーク、帝国のフレーゲル男爵ともいうべき強キャラが出た。
 同盟のフォーク准将も香ばしいキャラだったが、帝国のフレーゲル男爵は古谷徹御大の怪演もあり、その香ばしさの10段階先をいっている。フォークってまともなやつだったんだな……。ああなってしまうのも理解できる側面があるし……(フレーゲル男爵比)

フレーゲル男爵のここがすごい!!
・フォークに比べれば賢い。つまり世界の脅威。
・気分の上下がフォーク以上にすごい
・フォークより不審者。
・庭園で雨に打たれて大量出血しながら「金髪の小僧」ってずーっとブツブツ言ってる。フォークより不審者
フレーゲル男爵のここがやばい!!
・\全部/

 何するかわかんないから、フレーゲル男爵対策にフォーク准将をぶつけたほうがいい。銀河に亜空間が生じ、100周くらいまわって良い結果になるかもしれない。

キルヒアイス、「政争」に興味ない……?

 先ほどもメモしたが、ラインハルトが「焦土戦やるぞ」と言った後からのキルヒアイスの無表情が気になる。ポーカーフェイスを超えて無関心という印象を受ける。10年以上付き合ってきた親友を理解するのを、とうとうあきらめたのだろうか。
 アンネローゼ姉ちゃん関連やラインハルトがビッテンフェルトにキレた件では相変わらずの包容力の高い理解のある親友ぶりを示しているので、全てが面倒くさくなったわけではなさそう。
 ただ、物事がどんどんキルヒアイスの苦手な方向へ行っているような気がする。

 なんとなくだけれど、オーベルシュタインが得意な分野で無表情になる印象がある。謀略とか策略とか、政争とか。
 今回「そんな無表情で良いのかな」と不安になったのは、ラインハルトやオーベルシュタインが「皇帝が死んだな」「後継者争いが始まるな」「皇帝には3人孫がいるな」「今後、誰についていこうか」という悪い話をしている最中、誰よりも無表情だったことだ。ラインハルトの今後に関わる話なのに、そんなに表情がなくて良いんだろうか。

なんとなく眉をしかめているが、他の提督たちより驚きが少ない。
オーベルシュタインの話についていけないなぁ……って感じの顔してる(と思う)

 ラインハルトが門閥貴族のゴシップネタを披露している時も、キルヒアイスは愛想程度に少し笑っただけで関心がないかのような無表情を貫いている。

ラインハルトが楽しそうにゴシップネタ話してるのにこの表情。

 これは……。
 ……。
 あんまり興味がない!?
 まだ若すぎるほど若く、まだ軍事にしか精通していないキルヒアイスにとって、政争は不得手なのかもしれない。でも、これは責められるべきものではないし、むしろ個人的な問題の方をキルヒアイスに相談したいラインハルトの精神には都合が良い。……オーベルいてよかったな(ボソッ)
 だけれども、だったら宇宙艦隊副司令官というゴリゴリに政治と関わりそうなところに純粋無垢なキルヒアイス君を出すなよぉぉぉ!!!といいたくなる。あっ、オーベルシュタインと同じ意見になっている。

 オーベルシュタインの進言も確かに困るところがあって、「だったらどうしたらいいの」という解決策を提示できていないし、問題点をラインハルトばかりにいう。明らかにこの問題はラインハルトひとりが自分で解決できるような問題ではないので、逆にオーベルシュタインがキルヒアイスにすすめて、宇宙艦隊副司令官の職を辞するように持っていくべきだよなぁ〜、と思った。

まとめ

・皇帝死んだ
・フレーゲル男爵(強)
・オーベルシュタインママ、苦労するなあ……。
・お姉ちゃんは小さい家がいいって言ったのにクソデカパレス用意してくるラインハルト
・エルウィン・ヨーゼフ二世かわいい!

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