7/27 『極北』を読む

マーセル・セロー『極北』を読む。

どこかで見たような設定、どこかで見たようなシーンの多い終末小説ではあるが、作家と翻訳家の腕は確かで、どんどん読み進められるおもしろさがある。例えば『ザ・ロード』なんかを思い出したが、『ザ・ロード』よりも断然おもしろい。

小説は終末を描きつつリアリズムに貫かれ、しかし、一つだけ、明白に超現実的な「青い光」が登場する。あの光は、物語を語ることそのものの光と感じられもする。文明の遺産によって生きる可能性を否定し、血と土と手工業と共に生きる道を選ぶ結末はほとんど『風の谷のナウシカ』のようであるのは興味深い(ある種の定番として、自然回帰の思想というものがあるのだろう)。共に女性が主人公として配された物語であるが、そのような自然回帰的結末にはあるいは、作家が無意識に持つ象徴的な女性のイメージが関与しているのかもしれない。

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