20230624 小説を使う?

三宅香帆、エッセイ集がおもしろかったので新作の『名場面でわかる 刺さる小説の技術』を読み、それほど得るところはなく、刺さるところなく読み終えたのだが、ところで帯にある「エントリーシート・ブログにも使える!」という煽りが、本当にわけがわからない……。今日は学校に卒業生たちがやってきていて、やってくる卒業生たちというのはたいてい勉強が好きな子たちで、私がよく交流をもっていた子たちなどはやはり人文学を専攻にするようなのが多く、話を聞いても大学院に行こうだとか教員になるだとか何も考えていないだとか、実に「エントリーシート・ブログにも使える!」的な価値観から離れたそういう子たちの話を聞いてから読み終えたからだろうか、余計に気になる帯である。後輩たちに文学の話をしてくれた彼ら彼女らから、学問のおもしろさの話は出てきたが、学ぶ意義だとか、実用性だとか、そういった話はまったく出てこなくて、半分悪意、半分善意から「人文学を学ぶ意義って何だと思いますか」などと尋ねてみようと思っていたのだが、ただ学ぶおもしろさを語る先輩に、ただ学びを楽しみにする後輩たちを前にしてあまりに無粋に思われて、飲み込んだ――強いて答えを一つ挙げてみるなら、人文学というのは、意義、でもなんでも、そういうものを超えて思考するものだ。

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