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4/12 コロナウイルスの週末に歌集を読む

布団から手の届く本を何冊か恋人とぱらぱらめくる。

二冊の歌集を手に取る。一冊は萩原慎一郎『滑走路』、一冊は笹井宏之『えーえんとくちから』。たまたまどちらも若くして亡くなった歌人による歌集で、どちらも本当に良いものなのだが、萩原の歌は直球で、純粋で、10代、20代前半の感情が溢れている。笹井の歌は、巧みで鋭く、情景を思い描かせる。たとえば笹井の有名な、

「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい

は、点字をなぞる指先を読者に想像させると同時に、その歌の場面に実際にはない、彼(女)の脳裏によぎったであろう桜のはなびらの色、繊細さ、匂い、春の暖かさを読者に想像させる。二重に情景が詠み込まれている、とでも言えようか。

そんな話をしながら、コロナウイルスの週末を過ごす。風は強いが美しい春の日だった。マスクをつけて町を歩き、人のいない公園の清々しさなんかを想像する日々。


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