優しい毛布

50の詩の優しい毛布

「些細なることが大事」と言う君の言葉を信じそうめん茹でる

さわやかな風の毛布に抱かれて私は夢を見る子羊

稲妻をあなたの心に刺したくて 涙と混ざる熱いスコール

光さえ毒になったという君の傷から産まれる優しい毛布

ろうそくの命を削って燃える灯をかざして前へ 前へ歩こう

湯。あなたを守るゆるやかなまどろみ静かに揺れる羊水

きずついて暗闇の中ひざ抱えばんそうこうのSOSを

水脈をたどって行けば洞窟の中にゆるんだ涙の地層

ばらばらになった記憶の詩集にはあなたの風が吹き渡りゆく

楽園をあなたと創る約束の曙光にまみれた明けの明星

森林が夕陽に恋をする季節 「思い出」なんかに変える気はない

怒りさえ祈りに変えて 憎しみを歌に変えゆく泡の心臓

潤んでゆく瞳と身体「雨のせい」そう言う君のうつむいた顔

たましいの置き場求めてさまよいて星座を勝手にあなたと結ぶ

をはりまで一緒に歩いてゆきましょう約束をした楽園の果て

あこがれの白い虹を束にして投げて渡した光のブーケ

リンデンの木蔭の下に憩いては自分を救う自分を育てる

街灯のない夜の空ぽつねんと綱渡りするピエロの子ども

とうめいな風が産卵する五月 明日への希みが静かに息づく

うたの神もしいるならばしあわせに暮らせる歌をひとつください

我の傍パトラッシュの霊ありて 共に雪山まどろんでいる

たまねぎを剥いたふりして涙して あなたのいない「不在」を愛す

白鳩が飛び回りゆく境内を祈りを込めた花びらのごと

もう少し私の側にいてください 流星群をポケットに詰める

つらくともなんとか耐えて生き抜いてあなたの笑顔思い出します

夜の町静かに街灯ともる町 野良猫そっとミルクをせがむ

楠の木が大きくなったら木の下で本を広げて涼みましょうね

色褪せぬものだけすべて詰め込んであなたは夜の月光ソナタ

きんきんに冷えた氷の心から熱いお湯の涙あふれる

手をつなぎ魂の旅どこまでも広がる空を飛び回りたい

一生を君の笑顔で暮らします 血液の中流れています

君が逝き空は青くて晴れ渡り僕らの日々は続いてゆく、でも

瞬く間駆け抜けていく人生の光と陰に交差する歌

数式に私の恋を代入し口にほどける甘い金平糖

あたたかいお湯に変わる身体してしばらく私を抱きしめていて

りんりんと鳴く鈴虫の僕たちは秋の夜に静を奏でる

画家の持つ視点を何よりやわらかく私の心に刻印したい

突然の訃報にドッキリか悪い冗談聞いているよう

海の水 塩辛いけどなつかしき思い出すのは魚でいた頃

ゴビ砂漠行く隊商の笛の音が皆の心に故郷灯す

座布団を運ぶ人にこにこと日曜の夜温めている

「要らない」と言われて育ちし身なれども地球(ここ)にいるから歌っているよ

まろやかなマシュマロのごとやわらかき感受性持ち生きるボクたち

神木は蝉の聖堂 厳かな夏への祈りの聖歌沁みゆく

たまにはねワガママ聴いてあげるからあなたの笑顔を何より見たい

真っ白き砂糖で作った雪人形 風の弔歌にほどけてゆけり

太陽が西に傾く時の色まなざし優しく世界を包む

いよいよか僕の番だね終わりの日何も遺せぬままに旅立つ

つららとか透きとおるもの集めてはそのつめたさにつらぬかれたい

風光る君のえくぼがさみしそう せつなき日々のちいさな発見

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?