ショートショート「猫が死んだ」
飼い猫が死んだ。
今年で8歳になる白ベースにぶち柄の猫。妻の花臣が死んだ年から飼い始めた、名前は『奏』。
なんとなく名付けたつもりだったが、よくよく思い出せばこの世に生まれてくるはずだった娘の名前と同じであることに後から気付いた。
いつから自分はそんなにも愛情深い人間になったのだろうか。あんなにも従兄弟達の悪行に加担しているというのに、これじゃあまるで娘が産まれてくることを大層楽しみにしていたみたいだ。実際、生まれてきて欲しいとは強く思っていた。でもそれは親や親戚達に